中古住宅の契約前にインスペクションは必要?
中古住宅を購入する際にインスペクションの実施について説明を受け、受けるべきなのか悩んでいませんか?
「築年数が10年以内なら、調査はお金の無駄になる?」「どうせリフォームするから調査は必要ないのでは?」と感じている方も多いはずです。
しかし中古住宅には思わぬ不具合や欠陥が隠れている場合があるため、できればインスペクションを受けることをおすすめします。
インスペクションを受けるタイミングはいくつかありますが、おすすめしたいのは契約前の実施です。
今回のコラムでは中古住宅におけるインスペクションの必要性をお伝えしてきますので、ぜひ参考にしてください。
目次
中古住宅で行うインスペクションについて
まずはインスペクションとは何なのか、調査内容や建物状況調査との違いをお伝えします。
そもそもインスペクションとは?
インスペクションは住宅診断とも呼ばれる、住宅の健康診断のようなものです。
ホームインスペクター(住宅診断士)が対象物件を目視で調査し、結果を伝えるとともに第三者的な立場からアドバイスします。
調査でわかるのは主に次のような項目です。
- 物件の欠陥や不具合の有無(建物の傾きや雨漏り、構造体の腐食など)
- 修繕が必要な箇所
- 詳細な調査を行う必要性がある箇所
参考:日本ホームインスペクターズ協会
https://www.jshi.org/what/when/
住宅の状態を確認するだけではなく、修繕時期や修繕費用などもわかるのがインスペクションの特徴です。
建物状況調査との違い
「建物状況調査」は、国が定めた講習を受講した建築士のみが実施できる検査です。
インスペクションと混同されやすくコラムによっては「インスペクション(建物状況調査)」と説明されていることもありますが、両者には調査範囲に違いがあります。
インスペクションでは家全体を調査し、一戸建て住宅であれば床下に潜って点検するなど時間をかけて行います。
一方で建物状況調査の目的は不具合の有無を確認することなので、家の傾きや水漏れのチェックも一部分でよく、調査されるのは“宅建業法において定められた基準”のみです。
ホームインスペクションが全体的な調査、建物状況調査が部分的な調査だとイメージしていただけるとわかりやすいと思います。
中古住宅の購入で契約前にインスペクションを受けるメリット
契約後や引き渡し後でもインスペクションは実施できますが、なぜ契約前にしたほうがいいのか。その理由とインスペクションのメリットをお伝えします。
購入にあたって安心材料になる
一見劣化していないように見える物件でも、床を一枚剥がしてみるとシロアリの食害があったり水漏れがあったりと、中古住宅には思わぬ欠陥が隠れていることも少なくありません。
見た目だけでは状態が判断できないのが、中古住宅購入の難しい部分なのです。
そして欠陥や不具合が多いほど修繕費用も高くなるため、場合によっては新築と同等のコストがかかることもあります。契約前にインスペクションを受けておけば、そのようなリスクを防げるのはもちろん、購入後に安心して暮らせる物件であるのかも確認できます。
リフォームやリノベーション費用を把握しやすくなる
前述のように、インスペクションでは詳細な調査を行う必要性がある箇所やおおよその費用の説明があります。費用を把握しておけば、購入費用と合わせた予算組みや住宅ローンの借入額を決める指標のひとつになるでしょう。
もし想像以上に工事費用が高くなりそうであれば、「その物件は買わない」という選択肢を取れるのも、契約前に受ける調査を受けるメリットです。
売主に値下げ交渉をする根拠になる
インスペクションによって、修繕・改修費用が高くなりそうだと判明した場合や、売主でも見落としていた欠陥や不具合が見つかった場合、売主に値下げ交渉がしやすくなります。
とくに後者であれば値下げをしてもらう根拠があるため、売主に応じてもらえる可能性も高くなるでしょう。インスペクションの実施には、交渉を買主主導で進められるメリットもあります。
なお、契約書に記載のない欠陥や不具合が見つかった場合は「契約不適合責任」によって、契約後でも契約解除や損害賠償、補修などの対応が受けられます。
中古住宅の購入で契約前にインスペクションを受ける注意点
契約前のインスペクションには、2点ほど知っておきたい注意点があります。
売主の許可がなければ受けられない
いくら購入希望といっても、売主に拒否されると契約前のインスペクションは実施できません。拒否する理由は、スケジュール調整の面倒さや契約に至らない可能性の心配など、売主によってさまざまです。
引き渡しまでにインスペクションを受ける場合は、必ず売主の許可がいる点に注意しましょう。
費用と手間がかかる
インスペクションにかかる費用相場は4〜6万円で、買主負担となるのが一般的です。
契約に至らなかった場合も調査費用はかかるので、受ける物件が多くなるとその分インスペクション費用もかさみます。
また、検査には1〜3時間ほどかかり、依頼主(買主)の立ち合いも必要です。安心を得るための調査といえど、費用と手間がかかる点はデメリットとも取れます。
インスペクションを受けるか悩んだときの判断ポイント
インスペクション自体を受けるべきなのか悩んだとき、どのような部分から判断すればいいのでしょうか。最後に判断ポイントを2つお伝えします。
物件の築年数
前提として築年数にかかわらず、中古物件であればインスペクションを受けたほうが安心です。しかし受けるべきかと悩んでいるのであれば、築年数をもとに判断してください。
木造であれば築20年、マンションであれば築25年を超えた物件ならば、インスペクションを受けることをおすすめします。
瑕疵保険への加入希望の有無
瑕疵(かし)保険は、物件に不具合や欠陥が見つかった際に保険金が支払われる保険制度です。加入するためには保険会社が定める条件をクリアする必要があるため、保険会社が定めた建物状況調査を受けることになります。
加入のための調査では保険会社独自の審査項目のみが確認されますが、保険会社によっては追加費用を支払うことで、この調査に加えてインスペクションや耐震診断、フラット35適合検査を受けられることも。
瑕疵保険への加入を検討している方は、加入調査と同時に受けることで時間短縮につながります。
中古住宅の購入では契約前にインスペクションの実施を!
人が健やかに暮らすために健康診断を受けるように、家がどのような状態なのか、どのくらいの修繕が必要なのかを把握するためにもインスペクションは必要です。
実施するベストなタイミングは売買契約前ですが、売主と相談しながらいつ実施するのかを調整してみてください。
また、物件購入といえば不動産会社に相談する方が大半ですが、改修を検討しているのなら、まずはリフォームやリノベーションの会社に相談するのがおすすめです。
改修を前提とした、物件購入のアドバイスを受けられるでしょう。
サーラグループには、中古物件を取り扱う「中部ガス不動産株式会社」、リフォームやリノベーションを手がける「リビングサーラ」があり、各社が連携してお客さまに対応いたします。建物状況調査やインスペクションにも対応しておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
■監修_リビングサーラ/施工管理担当者_資格:1級建築施工管理技士・2級建築士
WRITER PROFILE
井本 ちひろ
建築科系学科卒の住宅×金融専門ライター。
子供に「おかえり」が言える仕事を探してライターの道へ。
大学で得た経験とFP2級の知識を活かし、家づくり、水回り設備、エクステリア、火災保険、相続など、住宅にまつわる幅広い記事を中心に活動中。