賃貸物件で画鋲を使うのはNG?何か代替品はある?

賃貸物件での暮らしの中で、壁に写真やポストカードを飾るなど、おしゃれな空間を作りたいと思う方も多いのでは?そんなときに気になるのが、画鋲などを使用しても良いかどうか。
賃貸物件は借り物という考え方をすると、小さな穴を作るのもためらってしまうものです。このコラムでは、画鋲で生じた穴は原状回復義務があるのか、また何か代替品があるのかご紹介します。
目次
賃貸物件に画鋲を使っても大丈夫?
賃貸物件に住んでいると、インテリアを自分らしく飾りたいという気持ちが強くなるものです。しかし、壁に画鋲を使うことに対しては、賃貸物件の規約や契約内容が気になる点です。「画鋲を使っても大丈夫か?」という疑問を持っている方も多いでしょう。実際、画鋲の使用には賃貸契約や管理規約に基づく制限がありますが、そのルールをしっかり理解することで、安心してインテリアを楽しむことができます。
画鋲を使用した場合、原状回復義務はある?

画鋲を使って壁にポスターや絵画を飾る際、気になるのが「原状回復義務」です。賃貸物件では、退去時に部屋を元の状態に戻す必要があり、その際に画鋲の跡がどのように扱われるかが問題になります。
壁に刺した画鋲の跡
画鋲等で生じた穴は、通常の暮らし方によって生じたものと考えられるため、原状回復義務からは外れる場合が多いです。念のため、賃貸借契約に明記されている原状回復の内容を確認するのも◎。
物件によっては、「これらの使用を認めない」と記載されている可能性もありますので、注意することが必要です。あまりに多くの画鋲を使用した場合は、下地ボードの修繕費用が求められる可能性があるので、節度を持った使用が望ましいです。
壁に画鋲で止めた場合の日焼け跡
画鋲を壁に刺した場合、主に問題になるのは「穴」の部分です。しかし、長期間にわたって壁に画鋲を刺しっぱなしにしていると、その周りに日焼け跡が残ることがあります。この場合、壁の色が変わり、原状回復を行う際に追加費用が発生することがあります。
画鋲を使う場合は、壁の色が変わらないよう、できるだけ早めに取り外すことが重要です。また、画鋲を使用する際には、刺す位置を考慮して、日光の当たらない場所を選ぶことのがおすすめです。
和室のふすまや部屋のドアに画鋲を使用した場合
賃貸借契約書で原状回復に触れる特約は物件により異なります。和室のふすまや部屋のドアに画鋲を刺して穴を開けた場合は、ふすまにしてもドアにしても、張り替え費用が発生します。
ふすまは躯体と同じ扱いなので、まるごと交換になり費用が上がることも。部屋のドアに画鋲を刺し、傷つけると、ドアごと交換という場合も。扉やふすまはそのままの状態で使用するほうが良いでしょう。特にふすまは非常にデリケートな素材でできており、画鋲を使うことで目立つ傷や凹みが残ることがあります。
和室やドアに画鋲を使う前に、素材が傷つきにくい方法を選ぶことが重要です。例えば、粘着性のフックなどの代替手段を使用することで、原状回復の負担を軽減できます。
原状回復義務のルール

原状回復とは「借りた時と同じ状態に戻して退去すること」と考えがちですが、住まいは時間が経つにつれて壁紙が汚れてきたり紫外線で畳などが傷んだりするケースもあります。新築同様の状態で戻して退去するということは難しいのです。
その為、原状回復には年月によって劣化した、普通に暮らしていて傷んだと考えるのものは含まれていません。借主の故意や過失などによって発生したものについては、元の状態に戻す必要がある=原状回復とされています。
国土交通省でも、原状回復をめぐる「トラブル」と「ガイドライン」について伝えています。
「原状回復をめぐるトラブルの未然防止のため、賃貸住宅標準契約書の考え方、裁判例及び取引の実務等を考慮のうえ、原状回復の費用負担のあり方について、妥当と考えられる一般的な基準をガイドラインとして平成10年3月に取りまとめたものであり、平成16年2月及び平成23年8月には、裁判事例及びQ&Aの追加などの改訂を行っています。」
原状回復義務の対象となる損傷とは
賃貸物件における原状回復義務は、入居者が物件を返却する際に物件を元の状態に戻す責任を指します。原則として、通常の使用による「損耗」や「経年劣化」は原状回復義務の対象外とされますが、画鋲による傷や穴は「通常の損耗」に含まれないことがほとんどです。
つまり、画鋲を使って壁に穴を開けたり、傷をつけたりした場合、それは通常の使用によるものとは見なされず、原状回復義務が発生します。 特に、画鋲を使うことで壁に小さな穴や傷が残ることがありますが、これは大家や管理会社が原状回復費用を請求する理由となりえます。
たとえ画鋲が小さいものであっても、壁が傷ついたり、色が剥がれたりすることで、修理が必要な場合が多いです。このため、賃貸契約書に記載されている「壁への損傷に対する責任」を確認しておくことが重要です。
画鋲を1箇所だけ刺した場合

画鋲を1箇所だけ刺した場合、通常であれば、原状回復費用が発生することは少ないかもしれません。しかし、これは壁材や刺した場所によって異なります。例えば、壁が特に薄かったり、クロスが剥がれやすい場合、1箇所でも跡が残り、その修理費用が請求されることもあります。
また、退去時に入居者が壁に穴を開けた記録を隠さずに報告しないと、修理が不十分な場合として問題になり、修理費用が請求される可能性があります。そのため、入居時に壁の状態を写真で記録しておくことをお勧めします。1箇所であれば軽微なものとして判断されることもありますが、契約時に何が許可されているのかを確認しておくことが最も重要です。
画鋲を数箇所だけ刺した場合
画鋲を数箇所に刺した場合、1箇所刺した場合と同様、特に壁に傷がついていたり、色が剥げてしまっている場合、原状回復義務が発生する可能性が高いです。数箇所の画鋲跡が残っていると、管理会社や大家はそれを「損傷」と見なして修理を求めてきます。特に、壁材がデリケートなものである場合(例えば、薄いクロスや壁紙など)、いくつかの画鋲跡が積み重なることで、修理が必要になることが多いです。
また、画鋲を刺す際に一度に多くのポスターや写真を掲示した場合、その重みや圧力で壁紙が破れたり、色あせが生じることもあります。こうした損傷が目立つと、原状回復義務が発生し、修理費用や再塗装費用を支払う必要が出てきます。場合によっては、壁全体を張り替える必要が生じることもあります。
画鋲をたくさん刺した場合

大量に画鋲を使って壁に傷をつけた場合、原状回復義務が確実に発生します。画鋲を何箇所も使って壁を傷つけた結果、壁に小さな穴が多数残ることになり、これが「損傷」と見なされるからです。特に、数十箇所以上の画鋲跡が残ると、壁の修理や塗り直しが必要になる場合があります。
また、壁が大きな損傷を受けていると判断されると、管理会社は修理を行う際に費用を請求してくることが一般的です。これらの修理費用には、壁の下地の修復、塗り直し、クロスの張り替えなどが含まれる場合があります。特に壁の面積が広い場合や、穴が深い場合は修繕費がかなり高額になることもあります。
そのため、画鋲を多く刺した場合は、退去時に修理費用の負担を避けるためにも、事前に確認や相談をしておくことを強くおすすめします。
原状回復にかかる費用は?
原状回復にかかる費用は、損傷の程度や管理会社によって異なりますが、壁に穴が開いた場合や塗装が必要な場合は、数万円以上の費用がかかることがあります。特に、画鋲を大量に使った場合や壁に深い傷がついた場合は、修理費用が高額になる可能性があります。
壁を傷つけずに部屋を飾るために画鋲の代わりになるものは?

画鋲を使用せずに、壁を傷つけることなく部屋を飾る方法はたくさんあります。以下にいくつかの代替案をご紹介します。
粘着フックや両面テープ
粘着フックや両面テープは、壁を傷つけずにポスターや絵画を飾るための便利なアイテムです。これらのアイテムは、取り外しが簡単で、壁に残る跡も最小限に抑えることができます。また、壁に跡を残さないタイプの両面テープを選ぶことで、退去時に心配することなくインテリアを楽しめます。
ひっつき虫
ポストカードなどを直接壁につけられるアイテム。両面テープが最初から付属しているのでほとんどの壁に貼り付けることができます。
突っ張り棒
最近では、強度の高い突っ張り棒もたくさん登場しています。突っ張り棒にS字フックなどをかけて写真フレームなどを飾ることや、服も収納することができるので、手軽におしゃれな雰囲気を演出することができます。
そのほかにも、壁につける可愛いマグネットや、ニンジャピン、マスキングテープなどさまざまなアイテムも。
画鋲の代わりになる商品を使いながら、部屋を彩るのがおすすめです。
賃貸向けインテリアアイテムの紹介
賃貸向けにデザインされたインテリアアイテム(磁石式のフレーム、吸盤式のフック、壁に取り付けることができる棚など)は、壁を傷つけずに部屋をおしゃれに飾るための理想的な選択肢です。これらのアイテムを活用することで、画鋲を使わずに部屋を飾ることができます。
画鋲を使う場合の注意点とトラブル回避法
画鋲を使う場合、注意すべき点をいくつか押さえておくことで、トラブルを回避することができます。
使用前に確認すべき賃貸契約内容

画鋲を使用する前に、必ず賃貸契約書を確認し、壁に傷をつけることが許可されているかどうかをチェックしましょう。管理会社によっては、画鋲の使用を禁止している場合もありますので、事前に確認することが重要です。
万が一のトラブル時にどう対応するか
万が一、画鋲による損傷が発生した場合、迅速に管理会社に連絡し、修理についての対応を協議しましょう。また、退去時に修繕費用が発生した場合に備えて、画鋲を使用した跡を写真で記録しておくと、後々のトラブルを避けることができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?賃貸マンションやアパートの壁も、壁にカレンダーなどを貼ることや画鋲を使用することなど、生活する範囲内で行うことは問題ありません。
しかしあまりにも画鋲を多く使用したり、穴を開けたりなど、限度を超えてしまう場合はNG。できるだけ、穴を開けないようなアイテムを活用することで現状維持することもできますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

■監修_サーラ不動産/担当者_資格:宅地建物取引士

WRITER PROFILE

岩下加奈
愛知県豊橋市在住。地元出版社に勤め、東三河エリアを中心とした住宅情報誌の編集長などを勤める。名古屋や東京などの雑誌・WEBのライティングや編集を行い、年間1000件以上の取材をこなす。豊橋市市役所広報アドバイザー、東三河の魅力を発信する講師活動、審査員なども務める。ワンライフコミュニケーション株式会社ゼネラルマネージャーとして、企業様・個人向けの外部広報を担当。