リースバックとは?利用前に知っておきたいメリットとデメリット
「資金が必要だけど、引っ越しはしたくない」「終活のために家を売却しておきたい」と考えている方におすすめなのが、『リースバック』です。
しかしリースバックについて調べるとマイナスな言葉も出てくるので、本当に利用すべきかと悩んでいる方も多いでしょう。
そこで今回のコラムでは、リースバックの仕組み、メリット、デメリットの3つを説明しますので、リースバックの利用をお考えの方はぜひ参考にしてください。
目次
リースバックとは?
メリットとデメリットを比較する前に、まずはリースバックの仕組みをおさらいしておきましょう。リースバックは、不動産会社やリースバック業者、投資家などに自宅を売却し、家賃を払う形で住み続ける仕組みのことです。
自宅を売却(Sell)して賃貸(Lease)するので、『セール・アンド・リースバック』とも呼ばれます。
リースバックはよく『リバースモーゲージ』と混同されますが、資金調達のために利用するという部分以外は仕組みが全く異なります。
リバースモーゲージは老後資金の調達のために自宅を担保にして融資を受けるので、所有権は自分のままです。一方リースバックでは自宅を売却するため、所有権は買主へと移ります。売却金の使用用途も自由です。
リースバックの仕組みについては国土交通省が『住宅のリースバックに関するガイドブック』内で詳しく説明していますので、ぜひこちらも参考にしてください。
リースバックのメリット
リースバックでは買取と同様に“査定額=売却価格”になり、早ければ1週間、遅くとも1か月以内には自宅を現金化できます。売却スピードの速さは、すぐに資金が必要な方にとっては大きなメリットでしょう。
ほかにもリースバックには、仲介売却や買取にはないメリットがいくつかあります。
それぞれ見ていきましょう。
売却後も家に住み続けられる
仲介売却や買取なら自宅の売却後は引っ越さなければなりませんが、リースバックは自宅の売却後も家賃を払う形でそのまま住み続けられます。引っ越しが不要な点は、住み慣れた地で暮らしたい方や、住み替えが難しい方にとっては大きなメリットです。
また、自宅の売却を近隣住民に知られる心配もないので、「家を売ったことを知られたくない」という方も安心して利用できます。
住宅の維持費が不要になる
リースバック後は所有権が買主へと移り、自分たちは賃借人として家で暮らします。賃貸物件と暮らしているのと同じ状態なので、これまでかかっていた固定資産税、都市計画税、修繕費などの維持費が一切かからなくなります。
これまでどおり家で暮らしつつ維持費が抑えられるのは、リースバックならではのメリットです。ただし、リース契約の内容によっては修繕費が貸借人負担となることがあるので、契約内容をよく確認しておきましょう。
家を買い戻しできる可能性がある
リース契約によっては、一度売却した家を買い戻すことができます。
買い戻し価格は売却価格に1〜3割ほど上乗せされますが、一時的な資金調達のためにリースバックを利用したい方にとっては、買い戻しができる点はメリットです。
ただしリース契約中に家賃滞納や契約違反などがあると、買い戻しができなくなる恐れがあります。契約履行ができるように、計画性をもって利用を検討しましょう。
リースバックのデメリット
売却後にリース契約を結ぶからこそ得られるメリットがあるリースバックですが、いくつかデメリットもあります。利用後に後悔しないよう、しっかりと目を通して理解しておきましょう。
仲介売却よりも売却価格が低くなる
リースバックの買取価格は、市場価格の6〜7割ほどが相場です。
仲介売却よりも売却価格が低くなってしまう点に納得のうえで、利用を検討してください。
また、自宅の状態によっては買取価格が5割ほどになることもあり、悪質な業者や個人の投資家が買主になると、相場よりも大幅に安い価格で買い叩かれてしまう心配もあります。
自宅を少しでも高く、よい条件で買い取ってもらうためには、慎重に業者を選びましょう。
周辺相場よりも家賃が高くなることがある
賃貸物件の家賃は周辺相場や物件の状態などによって決まりますが、リースバックの家賃は“売却価格と利回り”で決まります。そのため周辺の家賃相場よりも、払う家賃が高くなってしまうことも珍しくありません。
具体的にどうやってリースバックの家賃が算出されるのか、自宅の売却価格が2,000万円、3,000万円と仮定して、それぞれシミュレーションしてみましょう。
【計算式】
- 家賃 = 買取価格 × 期待利回り(6~8%) ÷ 12か月
期待利回り | 売却価格:2,000万円 | 売却価格:3,0000万円 |
6% | 10万円 | 15万円 |
7% | 11.6万円 | 17.5万円 |
8% | 13.3万円 | 20万円 |
表を見てわかるように、リースバックの家賃は10万円を超えることも珍しくありません。
家賃相場が高いエリアならば賃貸物件の家賃に大きな差は出ないかもしれませんが、場合によっては賃貸物件で暮らしたほうが家賃負担を抑えられる可能性もあります。
せっかく資金調達ができても、家賃の支払いによって生活が困窮すると本末転倒です。
さらに家賃滞納が続くと退去しなくてはならないので、家賃が支払い続けられる額なのかも含めてよく考えてみてください。
ずっと住み続けられるとは限らない
売却後に家に住み続けられるのがリースバックの大きなメリットですが、ずっと住み続けられるとは限りません。次のような状況や契約内容になっている場合は、退去を求められる可能性があります。
- 定期借家契約になっている
- 家賃の滞納が続いている
- 業者の倒産で家の売却されることになった
リース契約には『普通借家契約』と『定期借家契約』があり、普通借家契約は借主が希望すれば契約を更新できます。一方定期借家契約は、契約期間満了後の更新は原則不可。契約期間終了後には家から引っ越さなければなりません。
また、家賃の滞納が続いたときや、業者の倒産で家の売却が決まったときなども、退去を命じられる可能性があります。
普通借家契約にしたり定期借家契約の契約期間を長くしたりと、リース契約の内容でリスク回避もできますが、退去の可能性も念頭に、利用すべきなのかを慎重に検討しましょう。
まとめ
売却後も家に住み続けられるリースバックは、急な資金が必要になったときや住み慣れた家で暮らしたいと考える方にとって、メリットのある選択肢です。
しかし売却価格の低さや家賃の高さなどのデメリットもあるため、自分が売却で何を最優先するのかを、よく考えたうえで利用を検討しましょう。
中部ガス不動産では「ほっとリースバック」だけではなく、仲介や買取などのさまざまな選択肢の中から、お客さまに最適な方法を提案いたします。
リースバックの利用をお考えの方は、まずはご相談ください。
■監修_中部ガス不動産/担当者_資格:宅地建物取引士
WRITER PROFILE
井本 ちひろ
建築科系学科卒の住宅×金融専門ライター。
子供に「おかえり」が言える仕事を探してライターの道へ。
大学で得た経験とFP2級の知識を活かし、家づくり、水回り設備、エクステリア、火災保険、相続など、住宅にまつわる幅広い記事を中心に活動中。