空き家等売却時に注意したい仲介手数料|2024年改定、その他の費用や税金について解説

少子高齢化と人口減少により、日本では空き家が増え続けています。「令和5年住宅・土地統計調査」によると、空き家(賃貸・売却用や別荘、セカンドハウスなどを除く)の数は全住戸のうち5.9%を占め(2023年)、戸数で見ると5年で37万戸も増えています。
空き家問題が全国的に問題となるなか、2024年7月から、800万円以下の空き家等の売買における報酬額の上限設定が見直されました。これにより、空き家をはじめとした低廉な不動産の流通促進が期待されています。
この記事では、空き家売却時にかかる報酬額(仲介手数料)の算出方法や、上限見直しの内容について詳しく解説するとともに、それ以外にかかる費用や税金も紹介します。

目次
空き家売却時にかかる仲介手数料の算出方法

不動産を売買する際、多くの場合、不動産業者と媒介契約を締結して仲介業務を依頼します。仲介によって売買契約が成立したときには、不動産業者への成功報酬として「仲介手数料」を支払わなければなりません。
宅地建物取引業法(宅建法)に基づく国土交通省告示によって、不動産業者が受け取れる報酬額(仲介手数料の額)には上限が設定されています。基本となる計算方法は次のとおりです。
物件価格(税抜) | 仲介手数料の上限額 |
200万円以下 | 物件価格 × 5% +税 |
200万円超400万円以下 | 物件価格 × 4% +2万円 +税 |
400万円超 | 物件価格 × 5% +6万円 +税 |
例えば、所有する空き家を400万円(税抜)で売却した場合、仲介手数料の上限額は「400万円 × 4% +2万円 +税=19.8万円」となります。
このように売買価格に依存する報酬形態となっており、不動産業者の実際の業務量が反映されないという点が課題です。なお、法律で定められているのは上限額のみで、下限は決められていません。
低廉な空き家等(800万円以下の不動産)における報酬額改定とは?
上で紹介した仲介手数料の上限額について、告示が一部改正され、2024年7月1日から新たな規定が適用されています。
空き家の売主からすると、仲介手数料の負担が増える可能性があるため、事前に内容を把握しておくことが大切です。報酬額改定の具体的な内容と、改定に至った背景を見ていきましょう。
報酬額改定の内容

報酬額の改定は過去にも実施されています。2018年1月1日から施行された改正告示では、「物件価格が400万円以下のとき、売主から仲介手数料を最大18万円(税抜)受け取れる」とされました。
上記の改正をさらに強化する形で行われた今回の告示改正では、「物件価格が800万円以下のとき、仲介手数料を最大30万円(税抜)受け取れる」という内容が追加されています。また、適用範囲も売主だけではなく、買主まで拡大しています。
改正後は、先ほど例に挙げた400万円(税抜)の空き家を売却する場合においても、不動産業者は仲介手数料を最大30万円(税込33万円)受け取れることになり、従来と比べて12万円(税込13.2万円)多く受領できるようになりました。
つまり、低廉な(価格の低い)物件の売買において、不動産業者に支払う仲介手数料の上限額が以前よりも高くなったということです。
空き家問題対策の一環として行われた改定

今回の報酬額改定の背景には、冒頭に紹介した全国的な空き家の増加があります。空き家を管理せずに放置すると、劣化が進んで倒壊のリスクが高まるほか、衛生環境や景観の悪化、犯罪や不審火の危険など、さまざまな問題が発生します。
2023年12月には、空き家問題対策の一環として、十分な管理が行われておらず、今後上記のリスクを引き起こす可能性がある空き家を「管理不全空き家」として認定する旨の法改正が行われました。これにより、事態改善に向け、自治体が早期から介入できるようになっています。
ただ、空き家の数を根本的に減らすには、空き家を有効活用することが不可欠です。活用を進めるには流通の活性化が求められるものの、人口減少の著しいエリアでは物件価格が下落しています。そのため、物件価格をベースにする従来の報酬設定では、業務量に報酬額が見合いません。
結果として、地方で空き家の売買を仲介しても採算が合わないケースが多く、不動産業者が仲介を断る案件も発生していました。空き家を売りたいというニーズはあっても、仲介を使った売却ができないために、不動産流通が滞る事態になっていたのです。
そこで、800万円以下の物件における報酬額を最大30万円まで引き上げ、不動産業者が空き家を積極的に取り扱えるようにしました。
新規定は、建物の使用状況や築年数を問わないほか、更地や居住中の物件にも適用できるのもポイント。空き家に限らず、価格の下落に歯止めがかからない地方の不動産市場全体の活性化につながると期待されます。
なお、不動産業者が、媒介契約締結前に売主・買主へ報酬額のことを説明し、双方に合意することが適用条件です。
空き家売却にかかる仲介手数料以外の費用や税金

空き家売却に際しては、仲介手数料以外にもお金がかかります。支払いが必要な費用・税金は次のとおりです。
譲渡所得税 | 売却によって生じた収益(譲渡所得)に対して課税される、所得税・住民税・復興特別所得税の総称 |
印紙税 | 不動産売買契約書に印紙を貼付することで納める税金 |
解体費用 | 売却にあたって建物を解体する場合にかかる費用 |
譲渡所得税(所得税・住民税)
空き家の売却時に利益(譲渡所得)が発生したとき、所得額に応じた所得税・住民税・復興特別所得税がかかります。これらの税金を総称して「譲渡所得税」といいます。
譲渡所得は「物件の売却価格 −(物件取得費用+売却にかかった諸費用)」で計算するもので、売却による収益がそのまま課税対象となるわけではありません。
譲渡所得税は、売却した年の1月1日時点での所有期間によって「短期譲渡所得」「長期譲渡所得」に分けられ、それぞれに税率が定められています。
空き家の所有期間 | 税率(すべての合計※1) | |
短期譲渡所得 | 5年以下 | 39.63% |
長期譲渡所得 | 5年超 | 20.315% |
※1 所得税・住民税・復興特別所得税
なお、親からの相続で取得した空き家については「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」が適用される可能性があります。適用されれば、譲渡所得から最高3,000万円を控除できるため、実際には譲渡所得税は発生しないケースが大半でしょう。
印紙税
空き家の売買契約書を締結する際、契約書に印紙を貼付し、印紙税を納める必要があります。不動産売買契約書の印紙税に関しては、2027年3月31日まで軽減税率が適用されます。軽減後の税額は次のとおりです。
売買価格 | 軽減税率(2027年3月31日まで) |
10万円超50万円以下 | 200円 |
50万円超100万円以下 | 500円 |
100万円超500万円以下 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 1万円 |
※10万円以下、5,000万円超は省略
出典:国税庁
解体費用

既存の空き家を解体して更地で売却する場合、解体工事の費用がかかります。建物の解体費用の目安は建物構造によって異なり、木造で1坪あたり4万円程度、鉄骨造で1坪あたり6万円程度が相場です。
空き家問題の深刻化を受け、全国の自治体の多くが解体費用の補助金制度を設けています。適用要件や補助額は自治体によって異なるため、空き家の解体を検討している場合は、事前に自治体の窓口へ確認するとよいでしょう。
出典:NPO法人空家・空地管理センター
対策とまとめ
低廉な空き家等の報酬額改定により、売却する物件の価格が低くなればなるほど仲介手数料の占める割合が大きくなるので、売却後の手取り金額が小さくなってしまいます。今後、人口減少が進んで周辺地域の不動産需要がなくなれば、売却そのものが難しくなる「負動産」になる恐れもあります。
現在、空き家の売却時に使える税制上の特例に期限があることも踏まえると、活用する見込みのない不動産は、売れるうちに現金化したほうがよいでしょう。売却によって得た現金を別の形で運用するなど、資産の組み換えを行い、効率的に資産形成することをおすすめします。
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■監修_サーラ不動産/担当者_資格:宅地建物取引士

WRITER PROFILE

藤田一太郎
宅地建物取引士・再開発プランナー
大手不動産デベロッパーで都心商業施設の運営管理・企画・リーシングなどを経験。再開発コンサルでリーシング・契約業務、都心や地方の再開発企画業務に携わる。現在は、不動産ライターとして活動する一方、日本茶インストラクターとして茶農家メンバーとしても活動中。