【初心者必読】不動産投資の特長と注意点、おすすめの投資手法を解説

長期的に安定した家賃収入を得られる投資手法として人気の不動産投資ですが、実際に始めるとなるとハードルを感じる方もいるのではないでしょうか。たしかに不動産投資にもリスクは存在しますが、ポイントを押さえておけば影響を軽減することは可能です。
この記事では、初心者向けに不動産投資の特長や気をつけるべきポイントを紹介するとともに、初心者におすすめの不動産投資手法もわかりやすく解説します。

目次
不動産投資とは?
不動産投資は、住宅やオフィスビルなどの不動産を購入し、賃貸物件として運用することにより利益を得る投資手法です。
不動産投資で得られる収益には、大きくインカムゲインとキャピタルゲインの2つがあります。インカムゲインとは、資産の所有期間中に継続して得られる収益のことを指し、不動産投資では賃料収入などが該当します。一方のキャピタルゲインは、資産の売却益のことで、不動産投資で該当するのは物件の売却益です。
収益の種類 | 内容 | 不動産投資 |
インカムゲイン | 資産の所有期間中に継続して得られる収益 | 物件からの賃料収入 |
キャピタルゲイン | 資産の売却益 | 物件売却時の差益 |
地価や人気が急上昇しているエリアではキャピタルゲインが大きくなることもありますが、不動産投資における収益のメインは基本的にインカムゲインです。物件選びと運営管理のやり方を間違えなければ、長期安定的に収入を得られることから、多くの投資家から人気を集めています。
なぜ不動産投資は注目される?初心者にも魅力的な5つの特長
不動産投資が多くの投資から注目されるのは、次に挙げる5つの特長があるからです。
安定した収入を得られる

所有する賃貸物件から、毎月安定した賃料収入を得られる点が不動産投資の大きな魅力です。入居者がいる間は、毎月決まった賃料収入が入ってくるので、将来にわたっての収益の予測が立てやすいというメリットもあります。
この点が、株価の変動によって利益が日々変動する、個別株投資や投資信託などとは対照的です。
加えて、多くの不動産投資が長期運用を前提としているため、老後も所有し続ければ私的年金としての効果も期待できます。公的年金に加えて、毎月の賃料収入を得られるので、老後の生活にゆとりが生まれるでしょう。
投資に融資を活用できる
不動産投資ならではの特徴として、投資に金融機関からの融資を活用できることが挙げられます。
株式の信用取引などを除き、大半の投資は自己資金の範囲内でしか投資できません。初期投資が大きいほどリターンも大きくなるので、まとまった自己資金を用意できなければ、まとまったリターンも期待できないのが基本です。
一方、不動産投資は物件購入にあたって不動産投資ローンを活用できます。物件購入費用の1〜2割程度を頭金として用意することが推奨されますが、それでも自己資金の5倍以上の価値がある物件に投資可能です。
このように融資を活用して、少ない自己資金で大きなリターンを得られる投資効果を「レバレッジ効果」と呼びます。レバレッジ効果が働く不動産投資は、ほかの投資に比べて効率的な投資手法といえるでしょう。
インフレ対策になる
昨今、ウクライナ情勢や中東情勢などを起因とする世界的な資源価格の高騰、日米の金利差を発端とする円安などから、インフレの傾向が強まっています。インフレが進むと現金の価値が下がるため、預金や有価証券などの金融商品は価値が目減りします。
例えば、1年前は100円で買えた商品Aが、今年になって120円に値上がりしたとしましょう。すると、1年前の100円は商品Aと同じ価値だったのに対し、今年の100円は商品Aよりも価値が低いことになります。インフレで物価が上昇すると、額面は同じでも経済的な価値は下がってしまうのです。
しかし、不動産は金融資産と異なり現物資産です。現物資産は物価上昇に伴って価格が上昇するため、インフレ時にも価値があまり変わりません。不動産価格もインフレによって上昇する傾向にあり、立地によっては賃料水準も高くなる場合があります。
上記より、現金や預金などの金融資産を不動産に振り替えることで、インフレ対策にもなるでしょう。
節税効果を期待できる

不動産投資を行うことで、所得税や住民税の節税効果も期待できます。なぜなら、物件取得にかかる諸経費、所有期間中にかかる修繕費など、賃貸経営に関係する費用を経費計上できるからです。
経費とは、事業を行うために使う支出のことを指し、所得税や住民税の計算のベースとなる課税所得から差し引くことができます。経費の分だけ課税所得が小さくなるので、その年の所得税や住民税を少なくできるのです。
また、建物は減価償却が可能です。減価償却とは、資産の種類ごとに法律で定められた耐用年数(法定耐用年数)に応じて、取得費用を分割して経費計上できる仕組みのこと。例えば、新築の木造アパート(法定耐用年数22年)を8,000万円で購入した場合で考えると、期間中は1年あたり約363万円を減価償却費として経費計上できます。
不動産投資で得られた収益は「不動産所得」となりますが、この不動産所得は、会社から受け取る給料などの「給与所得」と損益通算できる決まりです。損益通算とは、特定の所得で生まれた赤字をほかの所得の黒字と相殺できる仕組みであり、減価償却によって不動産所得が赤字になれば、本業の所得と相殺して納税額を減らすことができます。
なお、減価償却による節税は厳密にいうと繰延べ(納税時期の先延ばし)です。不動産売却時にかかる譲渡所得税(所得税・住民税・復興特別所得税の総称)の課税対象である「譲渡所得」について、建物の取得額から減価償却分を差し引く決まりとなっているからです。
譲渡所得=物件の売却額−物件の取得額−売却にかかった費用
減価償却を行うと物件の取得額が低くなるので、譲渡所得が高くなり、結果的に収めなければならない税金が高くなるという仕組みです。
しかし、所有期間が5年を超える「長期譲渡所得」の税率は合計20.315%と低めに設定されています。通常の所得税は累進課税となっているので、一定以上の年収がある方であれば、トータルでも大きな節税効果が見込めます。
相続対策になる
不動産投資は相続対策としても効果的です。不動産は、相続税計算の基準となる相続税評価額が低く設定されているため、現金や預金、有価証券などを相続するよりも、税額を低く抑えられます。
具体的には、土地は道路ごとに設定された路線価(市街化区域の場合)、建物は固定資産税評価額によって、相続税評価額を求めるのが原則です。土地の路線価は時価の8割程度、建物の固定資産税評価額は時価の7割程度が目安とされています。
現金や預金、有価証券などの評価額は額面どおりである一方、土地や建物は時価の7〜8割で評価されるのです。同じ金額でも不動産を購入したほうが評価額を小さくできることから、相続対策として不動産投資に取り組む方も多くいます。
不動産投資初心者が気をつけるべき3つのポイント
上述のとおり、多くのメリットが見込める不動産投資ですが、投資である以上一定のリスクはあります。次の3つのポイントに注意し、リスクが許容できる範囲での投資を検討することが大切です。
賃貸需要が見込める物件を選ぶ

不動産投資の成否を大きく左右するのが物件選びです。賃貸需要の低い物件にいくら投資しても、十分なリターンは得られません。将来にかけて安定的な賃貸需要が見込める物件を選ぶことで、長期にわたって安定収入を得られる可能性が高まります。
賃貸需要が見込めるのは、次のような条件に当てはまる物件です。
・住宅地として人気の高いエリアにある物件
・駅近や商業施設に近接しているなど、利便性の高い物件
・エリアのターゲットのニーズに合った間取りや設備を備えている物件
・共用部の管理が行き届いている物件
特に気をつけたいのが、「エリアのターゲットのニーズに合っているかどうか」という点です。エリアによってファミリーが多かったり、一人暮らしの大学生が多かったりと、賃貸物件のターゲット層は異なります。例えば、ファミリーが多いエリアにワンルームアパートがあっても、安定的な賃貸需要は見込めないでしょう。
物件選びの際は、立地や建物の状態、周辺環境などをチェックするとともに、周辺エリアの賃料相場や賃貸需要も確認しておく必要があります。
余裕のある資金計画を立てる
初心者が不動産投資に取り組む際、資金計画に余裕を持っておくことも大切です。
まず、資金計画を立てるときには物件の購入資金だけでなく、運用し始めてからの修繕費や管理費、税金などのランニングコストもしっかり考慮しましょう。
加えて「不動産投資は賃料収入が定期的に入ってくるので、収益が予測しやすい」と紹介しましたが、これはあくまでも賃貸経営が順調なときに限ります。不動産投資には以下のようなリスクがあるため、常に対応できるよう資金の余力を残しておく必要があります。
不動産投資の主なリスク | |
空室リスク | 空室が発生して賃料収入が入らなくなるリスク |
滞納リスク | 入居者の滞納で賃料収入が入らなくなるリスク |
賃料下落リスク | 賃料水準が下落して、収支が悪化するリスク |
価格下落リスク | 物件価格が下落して、低い価格でしか売れなくなるリスク |
修繕リスク | 想定外の修繕で収支が悪化するリスク |
金利上昇リスク | 金利上昇でローンの返済負担が重くなるリスク |
災害リスク | 火災や地震などで物件が損壊したり、修繕費用が発生したりするリスク |
事故物件リスク | 事件や孤独死で賃料が大きく下落するリスク |
災害リスクや事故物件リスクは想定するのが難しいため、万が一のときの損失をいかに抑えるかがポイントです。それ以外のリスクに関しては事前の対策を講じることで、ある程度のリスクヘッジができます。
ただ、いずれにせよ、一時的な収支の悪化は避けられないため、余裕のある資金計画でリスクに備えましょう。
空室対策をしっかり講じる

上で紹介した不動産投資のリスクのなかでも、特に起こりやすいのが空室リスクです。
賃貸住宅の契約は2年間の普通賃貸借契約が一般的で、2年経過ごとに自動更新となります。しかし、入居者は事前に申告することで(退去希望日の1ヶ月前までが一般的)、期間内でも退去できます。仮に申告期限直前に退去希望を伝えられた場合、そこから入居者を募集しなければならないので、多かれ少なかれ空室期間が発生すると考えておきましょう。
また、退去後にはハウスクリーニングや原状回復工事などを行わなければなりません。収入が得られないばかりか、費用を負担する必要が出てくるのです。
物件購入時の資金計画では、一定の空室リスクを必ず見込みます。ただ、想定以上に空室が多い、あるいは空室期間の長い部屋が発生すると、期待した収入が得られずに収支が悪化してしまうでしょう。
入居者募集や契約業務は、賃貸管理会社に委託するケースが一般的です。空室が発生したらなるべく早く入居者を見つけられるよう、信頼できる賃貸管理会社と契約することが重要です。
初心者におすすめの不動産投資手法
不動産投資と一口にいっても、投資する物件の種類によって特徴が大きく異なります。ここでは、初心者におすすめの投資手法を3つ紹介します。
ワンルームマンション投資(区分マンション投資)

1つ目は、ワンルームマンション投資(区分マンション投資)です。マンションのうち1戸を購入して、賃貸物件として運用する投資手法であり、ほかの手法に比べて低価格でスタートできます。次の表は、ワンルームマンション投資のメリットとデメリットをまとめたものです。
ワンルームマンション投資のメリット・デメリット | |
メリット | デメリット |
・初期投資が比較的少ない ・管理に手間がかからない ・メンテナンス費用が小さい ・売却しやすい | ・毎月のリターンが限られている ・1戸のみ所有だと空室リスクの影響が大きい ・賃貸経営の裁量が小さい |
費用も手間もかからず、売却もしやすいことから、ワンルームマンション投資は特に初心者向けといわれます。都市部のワンルームマンションであれば安定した賃貸需要が見込めるので、空室リスクの影響を受けやすいというデメリットも軽減できます。
賃貸経営が軌道に乗り始め、2件目、3件目と所有物件を増やしていけば、空室リスクを減らすとともに、収入規模を拡大することが可能です。
戸建賃貸投資

ワンルームマンションと並んで、比較的小規模な投資でスタートできるのが戸建賃貸投資です。中古戸建住宅を購入し、リフォームなどを施したうえで、ファミリーを中心に貸し出すのが一般的なやり方です。
戸建賃貸投資のメリット・デメリット | |
メリット | デメリット |
・初期投資が比較的小さい ・一度入居すると長期間住み続けてくれるケースが多い ・修繕積立金や管理費などがかからない ・賃貸経営の自由度が高い ・利便性に劣る立地でも需要が見込める | ・毎月のリターンが限られている ・1戸のみ所有だと空室リスクの影響が大きい ・築古だとローンを組めないことがある ・中古の場合は修繕費がかさむことがある |
戸建賃貸投資は、物件を自由にリフォームしたり改装したりできるため、自分のイメージに沿った賃貸経営ができるという魅力があります。地方や郊外の中古戸建であれば数百万円程度で購入可能なので、購入費用を抑えつつ、リフォームやリノベーションに予算をかけるのも有効です。
その反面、修繕費が思いのほか高くなる可能性があること、資産価値が低く融資を受けられないケースがあることには要注意です。
一棟アパート投資

アパート一棟を丸ごと取得して、賃貸経営を行うのが一棟アパート投資です。ワンルームマンション投資や戸建賃貸投資に比べると初期投資はかかりますが、中古アパートであれば比較的リーズナブルに購入できる物件もあります。一棟アパート投資のメリット・デメリットは次のとおりです。
一棟アパート投資のメリット・デメリット | |
メリット | デメリット |
・空室リスクを分散できる ・大きなリターンが期待できる ・賃貸経営の自由度が高い ・資産価値が高い | ・まとまった初期投資が必要 ・維持管理に手間と費用がかかる ・失敗したときの損失が大きい ・売却しにくい |
一棟アパート投資は複数の住戸を貸し出すため、空室リスクを分散できるのが魅力です。家賃収入も戸数分入ってくるので、投資額に見合った大きなリターンも期待できます。
ただし、費用負担や失敗したときのリスクは、先に紹介した2つの投資手法よりも大きくなります。また、売却先が投資家に限られるため、出口戦略をより慎重に検討する必要があるでしょう。
まとめ
不動産投資はほかの多くの投資と異なり、購入してからの賃貸経営の良し悪しによって、得られる収益の大きさが変わります。それだけに専門知識の習得や念入りな準備が必要です。ただ、賃貸需要の見込める物件を選び、正しい方法で経営すれば、長期にわたって安定した収入を得ることができます。
とはいえ、賃貸経営にはノウハウが求められるので、初心者の方はまず小さな物件からスタートするのがおすすめです。ワンルームマンション投資や戸建賃貸投資で経験を積んだうえで、経営が軌道に乗ってきたら、徐々に資産を拡大していくとよいでしょう。
この記事が、読んでくださった皆さんにとって、不動産投資への第一歩を踏み出すきっかけになったのなら幸いです。

■監修_サーラ不動産/担当者_資格:宅地建物取引士

WRITER PROFILE

藤田一太郎
宅地建物取引士・再開発プランナー
大手不動産デベロッパーで都心商業施設の運営管理・企画・リーシングなどを経験。再開発コンサルでリーシング・契約業務、都心や地方の再開発企画業務に携わる。現在は、不動産ライターとして活動する一方、日本茶インストラクターとして茶農家メンバーとしても活動中。