任意売却物件とは?購入するメリット・デメリット、注意点などを解説

任意売却物件とは?購入するメリット・デメリット、注意点などを解説

マイホーム取得にあたって、任意売却物件の購入を検討している方もいるのではないでしょうか。任意売却物件は、相場よりも手頃な価格で購入できるなどのメリットがある反面、通常の物件とは異なるデメリットやリスクも存在します。

この記事では、任意売却物件の基礎知識やメリット・デメリットについて解説するとともに、任意売却物件購入時の手順や注意点も紹介します。住宅の購入費用を抑えたいと考えている方は、ぜひご一読ください。

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任意売却物件とは?

そもそも、任意売却物件とはどのような物件なのでしょうか。ここでは、任意売却の基本的な仕組み、通常の物件や競売との違いなど、前提となる基礎知識を解説します。

任意売却の基本的な仕組み

電卓

任意売却物件とは、住宅ローンなどの返済が困難になった所有者が、融資を受けている金融機関の同意を得て売却する物件のことをいいます。

住宅ローンを組んでマイホームを取得した場合、毎月ローンを返済する必要があります。そのため、購入前に資金計画を立て、計画的に返済できるよう慎重に検討するでしょう。

しかし、病気やケガで働けなくなったり、会社都合での解雇により収入がなくなったりして、急に返済が難しくなることもあります。物件の売却代金でローンを完済できるなら、売却代金を返済に充てればよいですが、売却しても完済できない可能性が高い場合は問題です。

なぜなら、残債のある物件を売却するには、金融機関の設定している抵当権を抹消する必要があるからです。通常、抵当権を抹消するのは完済時であり、売却してもローンが残る場合は「抹消できない=第三者に売却できない」ということになります。

こうしたケースで活用されるのが任意売却です。売却代金では完済が難しい物件について、金融機関の同意を得たうえで、一般市場において売却します。売却できれば、その代金を残債の返済に充てることができるのです。

任意売却と競売の違い

③競売情報

住宅ローンの返済が困難になった場合の売却手続きとして、任意売却のほかに競売があります。

競売は、債権者(金融機関)により抵当権が行使されたときに行われる手続きです。抵当権が行使されると、物件が差し押さえられ、裁判所への競売申し立ての後、強制的に売却され、売却代金は優先的に債権回収へと充てられます。

任意売却と比べたときの違いを挙げると、以下のとおりです。

  • 所有者側の意思や希望に関係なく売却が行われる
  • 実質的に裁判所が売却価格を決定するため、低価格で売却されやすい
  • 引き渡し時期を自由に決められない
  • 売却後に残債があっても、返済が免除されない

このように、競売は法的手続きであるため、任意売却よりも所有者にとって厳しい内容となっています。

任意売却物件を購入するメリット・デメリット

前述のとおり、任意売却物件は通常の物件とは異なるプロセスで売却されるため、購入者にとっても特有のメリットとデメリットが存在します。ここでは、任意売却物件を購入するメリットとデメリットをそれぞれ見ていきましょう。

購入するメリット

家のおもちゃとお金

任意売却物件の最大のメリットは、一般的な市場価格よりも手頃な価格で購入できることです。任意売却物件の売却価格は売主側で設定できるものの、売却目的が金融機関による債権回収であるため、いかに早く売れるかが重視されます。その結果、物件によっては、相場よりもかなり安い価格で購入できるケースもあります。

また、任意売却物件は通常の物件と取引形態がほとんど変わらないため、内覧の実施や引き渡し日の調整など、比較的自由に調整できる点もメリットです。競売物件と異なり、売主との調整次第でじっくり内覧することも可能なので、物件の状態を入念にチェックしたうえで購入できるのも魅力といえるでしょう。

売主の意思に関わらず強制的に売却される競売に対し、任意売却では売主の意思に基づいた売却となります。そのため、対応してもらえることは限られるかもしれませんが、内覧や退去・片付けなどに関して相談ができます。

住宅ローンに関しても、競売物件の購入で利用するのはハードルが高い一方、任意売却物件の購入では、通常物件と同様に利用できます。

購入するデメリットと考えられるリスク

不動産価値

任意売却物件を購入するデメリットとして第一に挙げられるのが、引き渡しまでに時間を要することです。

任意売却は、売主の希望をある程度反映できるとはいえ、最終的な目的は債権者である金融機関の債権回収にあります。したがって、物件価格などの条件を決定するにあたり、金融機関の承諾を得なければなりません。こうしたことから、通常物件に比べて、契約から引き渡しの期間が長くなりやすいのです。

任意売却物件の購入にはリスクも伴います。特に気を付けたいのが、金融機関が競売を取り下げていない場合です。物件によっては、任意売却での購入を申し込んでいても、競売手続きが進行してしまい、最終的に購入できないケースがあります。競売が取り下げられていない物件に関しては、できるだけ早めに売買契約を締結することが重要です。

さらに、売主が経済的な問題を抱える任意売却物件には、通常物件と異なる特殊な側面があります。例えば、通常売主が負うべき「契約不適合責任」が適用されない場合があることや、残置物の撤去費用が買主負担になりやすいことなどが挙げられます。

任意売却物件は購入価格こそ安いものの、物件の状態が悪いと、余分な費用がかさむこともあるので注意しましょう。

任意売却物件を購入するときの手順

任意売却物件を購入したいときには、どのように検討を進めればよいのでしょうか。以下では、任意売却物件の一般的な購入手順を紹介します。

物件情報の収集

部屋探し

まずは、希望条件に合う物件を探すことからスタートします。任意売却物件の取引は通常物件とほぼ変わらないため、一般的な物件探しと同様、不動産ポータルサイトで検索したり、不動産会社で相談したりすることも可能です。

ただし、物件数が限られるので、任意売却物件に狙いを定めるのであれば、任意売却物件専門の検索サイトを利用するのが効率的でしょう。専門の不動産会社のなかには、悪質な会社も少なからず見られるため、取引する前に信頼できる会社かどうか、慎重にチェックすることが大切です。自分だけで判断できない場合は、不動産会社や弁護士など、信頼できるプロに相談しながら見極めるようにしましょう。

内覧、法的状況の確認

気になる物件が見つかったら、不動産会社に問い合わせて、実際に物件を内覧します。通常物件と同じく、内覧時には売主と直接話をすることができるので、住んでいる人にしかわからない、住み心地や周辺環境に関する事項を確かめましょう。

これも通常物件と同様、時間帯を変えて何回か内覧することで、正確な状況を把握しやすくなります。ただし、任意売却物件は売却を急いでいるケースが多いため、検討に時間をかけ過ぎるのは得策ではありません。

内覧時には、室内や周辺の様子を見るだけでなく、細かな傷や汚れ、建具の建て付け、水回り設備の異常の有無など、細かなところまでチェックすることをおすすめします。前述のように、任意売却物件では売主の契約不適合責任が免除されるケースも多いため、要修繕箇所があまりにも多いようだと、初期費用がかさむ恐れがあります。

あわせて、物件が法的にどのような状況にあるかも確認しておきましょう。もし、金融機関が競売を取り下げていないようなら、契約を急がなければなりません。マンションの場合、管理費や修繕積立金の滞納がないかどうかもチェックしておきたいところです。

購入申し込みと交渉

不動産買付証明書とミニチュアの家

買いたい物件が決まったら、不動産会社に買付証明書を提出し、売主へ購入希望の意思表示をします。この時点では、あくまでも購入希望者として手を挙げただけに過ぎず、購入できると決まったわけではないので注意しましょう。

買付証明書を提出後、購入価格や引き渡し時期などの条件を交渉します。値下げ交渉も可能ですが、金融機関の債権回収が目的である以上、大幅な値下げは難しいと心得ておく必要があります。

なお、購入にあたっては金融機関の同意が必要になるため、仲介する不動産会社は同意を得るための協議を行います。同意を得るのに時間がかかるケースもあるので、スケジュールは余裕を見ておきましょう。

売買契約と引き渡し

価格をはじめとする条件が整ったら、住宅ローンの事前審査を申し込みます。事前審査が通ったら、宅地建物取引士による重要事項説明を受け、売買契約を締結します。

売買契約の締結後、住宅ローンの本審査へと進みます。本審査時には、収入証明書類や印鑑証明書などさまざまな書類を提出しなければならないため、あらかじめ準備を進めておき、スムーズな手続きを心がけましょう。

本審査を通過したら、金融機関と金銭消費貸借契約(ローン契約)を締結します。融資が実行されるタイミングで代金の決済を行い、物件の引き渡しを受けます。

任意売却物件購入時の3つの注意点

前述のとおり、任意売却物件には、通常物件と異なる特有のリスクがあります。こうしたリスクを回避するためには、次の3点に注意しましょう。

抵当権や差し押さえが解除されているか確認する

不動産の権利証

任意売却物件は、競売手続きのために金融機関が差し押さえを行っている場合があります。差し押さえが解除されないまま購入手続きを進めていると、交渉途中にもかかわらず競売にかけられてしまう恐れがあります。競売は法的な手続きで強制力があるため、競売で落札されてしまうと、その物件を購入することはできません。

また、住宅ローンを組んでいる金融機関以外の抵当権が設定されていないかも、重要なポイントです。なかには、物件を担保に複数の債権者から借り入れをしている所有者もいます。任意売却で得られる代金は、優先順位の高い債権者から順に配当されるため、優先順位の低い債権者は代金を受け取れない可能性が出てきます。

このようなケースでは、すべての債権者の同意を取り付けることができず、競売を避けるために抵当権を残したまま、売却が行われる場合があるのです。こうした物件を購入すると、債権者に対して「抵当権消滅請求」を行うなど、一定の手間や費用が発生する可能性があります。

上記のリスクを防ぐため、任意売却物件の購入前には、抵当権や差し押さえが解除されていることを必ず確認しましょう。

物件の状態とリフォーム費用に気を付ける

外壁のひびわれ

任意売却物件を購入する場合、修繕が必要な箇所がないかチェックすることも大切です。リフォームが必要なケースでは、どれくらいの費用がかかるのかもあわせて確認しておきましょう。

通常の売買契約では、売主は契約不適合責任を果たすものとされています。これにより、物件購入後に重大な欠陥が発覚した場合でも、売主負担での修繕、賠償、代金の減額請求などを求めることができます。

・契約不適合責任引き渡された商品が、種類・品質・数量に関して契約の目的を果たしていないと認められる場合に、売主が負う責任のこと。

しかし、任意売却物件では、売主の契約不適合責任が免責される場合が多くなっています。購入後に欠陥が発覚しても、買主自身の負担で修繕しなければならないということです。

修繕やリフォームの費用で予算をオーバーするような事態を避けるためにも、内覧時に物件の状態をくまなくチェックすることを強く推奨します。

<h3>手続き期間の長さを考慮する

任意売却物件は、通常物件に比べ、購入を申し込んでから引き渡しまでの手続きに時間がかかる傾向にあります。

任意売却時、売主は売却活動に入る前に金融機関の承諾を得ています。ただし、これは、物件の査定結果をもとに決定される売り出し価格に対する許可です。交渉の過程で値下げしたり、さまざまな条件を付けたりすると、その都度金融機関の承諾を得る必要があります。

金融機関によっては承諾までに時間がかかるケースもあるため、スケジュールには数ヶ月程度の余裕を持っておきましょう。

専門家にサポートしてもらう重要性

契約手元

任意売却物件のリスクをなるべく低減するには、不動産会社や司法書士などの専門家のサポートを受けることをおすすめします。

任意売却物件の取り扱い実績の多い不動産会社に相談すれば、注意すべきポイントを把握しているので、購入手続きをスムーズに進められる可能性が高まります。自分で基礎知識や情報を押さえておくことも大切ですが、法的な手続きの円滑な進行やリスク回避のため、専門家のサポートも上手に活用しましょう。

まとめ

任意売却物件は、通常の物件に比べて手頃な価格で購入できるなどのメリットがある反面、法的手続きの煩雑さや手続き期間の長さなど、特有のデメリットやリスクも存在します。今回紹介した注意点を十分に理解し、必要な対策を事前に講じておきましょう。

しかし、素人が、物件の状態や法的な状況を漏れなくチェックするのは難しいのが実情です。任意売却物件の購入に際しては、実績豊富な不動産会社や司法書士など、信頼できる専門家のサポートを得ることが重要です。

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WRITER PROFILE

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藤田一太郎

宅地建物取引士・再開発プランナー

大手不動産デベロッパーで都心商業施設の運営管理・企画・リーシングなどを経験。再開発コンサルでリーシング・契約業務、都心や地方の再開発企画業務に携わる。現在は、不動産ライターとして活動する一方、日本茶インストラクターとして茶農家メンバーとしても活動中。

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