バリアフリー住宅の身近な事例とは?

バリアフリー住宅の身近な事例とは?

高齢化社会の現代、老後のことをその時になってから考えて行動するのでは遅く、今から備えておく必要があります。

ご自分やご家族が長く生活していく中で、暮らしやすい家づくりを考えた時、「バリアフリー住宅」はとても重要であり、導入をお勧めします。

今回は段差の解消やスロープなど、住まいの中でできるバリアフリーの解説や、リフォームをする際のお勧めの場所や効果を詳しく説明します。

「バリアフリー化を考えているけど、我が家にはどんなリフォームが必要なのか分からない」「将来的にどんなリフォームをすれば生活しやすいのか知りたい」といったことでお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

バリアフリー住宅って何?

バリアフリー住宅とは、障害者や高齢者の方が生活を送る上で支障となる障害物(バリア)を取り除き、生活しやすいような設備やシステムを備えた住宅のことを指します。

健常者にとって安全であっても、障害者や高齢者には同じであるとは限りません。

お体が不自由でも、身体機能が衰えても、安心して、怪我をすることなく安全に暮らすことができ、また介助者が介護をしやすい環境を備えた住まいがバリアフリー住宅です。

また、バリアフリー住宅は物理的障壁の除去を指すことが多いですが、障害者の社会参加を困難にしている社会的、制度的、心理的なすべての障壁の除去という意味でも用いられます。

高まるバリアフリー住宅の需要

バリアフリー 打ち合わせ

近年、家庭内での不慮の事故は多発しており、死亡者数も増えています。

厚生労働省の人口動態調査における高齢者の「不慮の事故」による死亡者数は、2010年に3万人を超えて以降、毎年3万人以上となっています。

この中で、交通事故や自然災害による死亡者を除いた数は、2016年が2万7207人で、交通事故(3061人)や自然災害(1424人)をはるかに上回っています。

死亡者数に占める高齢者の割合も、2010年以降は8割以上となっています

不慮の事故死でも特に多いのが、溺死転倒・転落による事故死です。

2007年から10年間では交通事故や火災などによる死亡者数が減少している一方で、溺死や転倒・転落、誤嚥等の不慮の窒息による死亡者数が増えているのです。

事故の種別ごとに高齢者の救急搬送者数を見ても、転倒・転落による通報が最も多く、全体の8割を占めています

こういった事故を未然に防ぐため、事故が発生する場として多い浴槽や浴室、廊下や玄関に手すりを取り付ける、床を滑りにくくする、段差をなくすといった対応が必要になってきており、バリアフリー住宅の需要が高まっているのです。

参照:高齢者の事故の状況について(厚労省)

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_009/pdf/caution_009_180912_0002.pdf

ユニバーサルデザインとの違い

近年、「ユニバーサルデザイン」という言葉をよく耳にすることがあると思います。

総務省によると、バリアフリーが障害や高齢化によってもたらされる障壁に対処するという考え方であるのに対して、ユニバーサルデザインは、あらかじめ障害の有無、年齢、性別、人種等にかかわらず、すべての人々が利用しやすいように都市や施設、製品や生活環境をデザインする考え方を意味します。

参照:バリアフリーとユニバーサルデザイン(総務省)

https://www.soumu.go.jp/main_content/000546194.pdf

両者はよく混同されますが、発案された背景は大きく異なります。

ユニバーサルデザインは、障害者だったロナルド・メイス氏が、バリアフリーに対応した設備の「障害者だけの特別扱い」に嫌気がさし、最初から幅広い人たちに使いやすいものを作る設計手法として発明されました。

一方、バリアフリーは障害者、高齢者ら生活弱者のために、生活に障害となる物理的な障壁の削除を行うという、過去の反省に立った考え方で進化してきました。

普及の方法も異なり、ユニバーサルデザインは良いものを褒めたたえ推奨する「民間主導型」であるのに対し、バリアフリーは法律等で規制する事で普及させる「行政指導型」です。

バリアフリー住宅の事例

バリアフリー住宅へ変える上で、どんなリフォームの方法があり、どんな効果が見込めて、どんな事故を防げるのでしょうか。家庭内の場所ごとに具体例を紹介します。

水回りのバリアフリー事例

ユニバーサルデザインのバスルーム

浴室

手すりを設ける

浴室で多い転倒事故を防ぐため、壁や浴槽内に手すりを設置すると効果的です。背の高さや体の向きに合わせた適切な場所に設置することで安全性が向上します。

滑りにくい床を採用する

浴室の床は水や泡で濡れ、滑りやすい状態です。転倒を防ぐため、床やバスタブに滑りにくい材質や水はけの良いタイプを採用しましょう。介助者も安心してサポートできます。

段差をなくす

浴室の出入り口に段差があると、またぐ際に転倒事故が起こる可能性があります。段差をなくしてフラットにする事で事故を防止しましょう。

トイレ

バリアフリー トイレ

寝室近くに設置する

トイレが寝室から遠いと、移動中の転倒事故や、寒い時期にはヒートショックの心配も高まります。また、夜中にトイレに向かうのが面倒になり、我慢することで健康を害することにもつながりかねません。

外から鍵を開けられるようにする

もし要介護者がトイレの中で倒れてしまった場合、施錠されていると救助が難航することになります。外から鍵を開けられるようにリフォームをしておけば、緊急時にも安心です。

手すりを設ける

トイレは履いているズボンを下ろしたり、便座に腰をかける動作で転倒の危険性があります。浴室と同様、適切な位置に手すりを設置しましょう。

洗面所

◆車いすで使える高さに

車いすに座ったままでも使いやすい高さに洗面台を設置する事で、介助者の力を借りる事なく一人で使うことができます。車いすのまま洗面台の前まで移動できるように十分な幅の空間と、洗面台下の収納という障害をなくすことも重要です。

キッチン

◆高さを調節できる調理台に

昇降式のキッチンにしておけば、誰でも安全に使用できます。高さ調節が可能なキッチンは洗い場の下が十分な広さになっていますので、車いすに座ったままでも使用する事が出来ます。

玄関・廊下のバリアフリー事例

スロープ 玄関

◆段差をなくす

ほとんどの住まいに存在するのが、玄関と廊下を隔てる段差です。これを解消することで、転倒を防ぎ、車いすの出入りが楽になり、介助者の負担も減ります。杖を付いて移動する方にとっても段差のない玄関は安心です。

スロープを設置する

スロープを設置する事で段差がなくなり、転倒の危険性が減ります。雨天時には濡れた靴で地面が濡れ、斜面の部分では滑りやすいので、スロープの素材にも気を配りましょう。

車いすで通れる広さに

車いすが通るには、最低でも90センチの幅が必要です。進んだり、戻ったりするだけでなく、進行方向を変えるという動作も考慮した広さでつくる場合、150センチは必要となります。

手すりを設ける

玄関や廊下の壁に手すりを付けることで、転倒を防ぎます。設置する際には、使用者の身長や、車いすで移動する上での高さにあった位置に取り付けるようにしましょう。

参照:リビングサーラ ブログ

https://living-sala.co.jp/blog/p4128/

扉・照明のバリアフリー事例

バリアフリー ドア

◆引き戸にする

押したり引いたりする扉は車いすでの出入りがしにくく、高齢者にとっては扉が重たいケースもあります。引き戸タイプなら開け閉めしやすく、開口幅が広いものを設置すれば車いすでも楽に通れます。

点灯・消灯しやすい照明に

大きめのスイッチや、暗闇でも光って場所を教えてくれるスイッチの照明が便利です。車いすでも押しやすい高さや場所にスイッチを設置することも大切です。

リビング・ダイニングのバリアフリー事例

◆広い空間を確保する

車いすでも入りやすいように、出入り口も部屋全体も広くつくると効果的です。

家具でも、車いすで使用しやすい高さに調節できるテーブルが便利です。小さな段差でも転倒事故は起きますので、フラットで滑りにくい床にすることをお勧めします。

バリアフリー住宅の間取り

バリアフリー 設計図

リフォームにしても新築にしても、バリアフリー住宅にする際には間取りを留意することも重要です。ポイントを紹介します。

移動しやすい動線を

介助者と要介護者が一緒に移動したり、車いすで移動することを考えると、平面的には広い通路幅と開口幅が求められます。引き戸の採用も推奨します。手すりを適切な場所に設け、適度な明るさの照明を設置する事で、自立して生活できる空間に近づきます。

上下移動をサポートする機器

2階に要介護者が生活する空間がある場合、エレベーターの設置を検討しましょう。エレベーターのサイズも、車いすに対応できるタイプを選ぶ必要があります。

建物の構造や費用面でエレベーター設置が難しい場合、階段に取り付ける昇降機や、階段の幅を広くするといった、上下移動の際の負担をなるべく減らす工夫が必要です。

廊下はできるだけ短めに

移動距離をできる限り少なくするため、廊下はなるべく短くしましょう。寝る、食べる、トイレに行くなどの機能が近くにある事で、ストレスなく、快適に過ごすことができます。他の家族との距離も近づくため、要介護者が安心感を得られます。

さいごに

バリアフリーを考える家族

バリアフリー住宅は高齢者や障害者といった要介護者が暮らしやすく、「自分でできる所は自分で」という自立を促す家づくりです。一生暮らしていく家だからこそ、要介助者だけでなく、家族や介助者らにも優しい構造にする必要があります。

「我が家には障害者はいない」「両親と住む予定はないから」といって何も行動を起こさないのではなく、いつどんな時も、誰もが暮らしやすい住まいづくりを実現させておくことで、将来への備えはもちろん、子どもや孫たちへの財産にもなります。

リフォームの際には、要介護者が暮らす家では介護保険制度や、減税を受ける事もできるといった補助金制度もあります。

ぜひ、バリアフリー住宅へ具体的に動き出すきっかけにしてください。

■監修_リビングサーラ/施工管理担当者_資格:1級建築施工管理技士・2級建築士

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WRITER PROFILE

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由本 裕貴

1983年3月20日、愛知県豊川市生まれ。
御津高校、愛知大学を経て、2005年に日刊スポーツ新聞社入社。プロ野球やサッカー日本代表を担当し、2014年に東愛知新聞社へ転職。2021年からフリーに転向し、翌年から東日新聞ライターとして東三河のニュースや話題を追っている他、スポーツマガジンやオカルト雑誌などでも執筆。豊川商工会議所発行「メセナ」の校正も請け負う。著書に「実は殺ってないんです 豊川市幼児殺害事件」「東三河と戦争 語り継ぐ歴史の痕跡」「訪れたい 東三河の駅」がある。
家族は妻と長男。趣味はスポーツ観戦、都市伝説の探求。

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