スマートハウスとは?導入するメリット・デメリットを解説
近年の省エネ意識の高まりによって、耳にする機会の増えた「スマートハウス」。スマートホームやIoT住宅など、最新技術を活用した他の住宅と混同している方も多いのではないでしょうか。
今回は、スマートハウスの特徴、スマートホームやIoT住宅との違いについて解説するとともに、スマートハウスを導入するメリット・デメリットを紹介します。必要な設備もお伝えするので、今後の家づくりの参考にしてください。
目次
スマートハウスとは?
そもそもスマートハウスとはどのような住宅のことを指すのでしょうか。また、同じように使われることの多い、スマートホームやIoT住宅とはどのように違うのでしょうか。
まずは、スマートホームの基本について解説していきます。
スマートハウスとは「ITの力でエネルギー消費を最適にする住宅」
スマートハウスとは、住宅内の家電などをITの力でコントロールすることにより、エネルギー消費を最適な状態に調整する住宅をいいます。
太陽光発電システムなどを使った「創エネ」、家庭用蓄電池などによる「蓄エネ」、家電のコントロールや省エネ設備の導入による「省エネ」を組み合わせ、エネルギーを管理することで、エネルギー消費を効率化します。
スマートホームとの違い
スマートハウスと間違えやすいのが「スマートホーム」という言葉です。スマートホームとは、ITの活用により暮らしが便利になるとともに、外部との接続により家にいながらさまざまなサービスを受けられる状態のことを指します。
つまり、スマートハウスはハード面を指すものであり、スマートホームはソフト面を指すものといえるでしょう。
IoT住宅との違い
IoT(Internet of Things)は「モノのインターネット」ともいわれます。これは、家電や住宅設備などがインターネットに接続された状態のことをいい、接続された機器同士が相互に情報交換したり、機器を外部からコントロールしたりすることが可能です。
こうした技術を利用して、便利で快適な暮らしを実現する住宅は「IoT住宅」と呼ばれます。スマートハウスが環境性能に重きを置いているのに対し、IoT住宅は利便性に主眼を置いている点が違いです。
ちなみに最近では、スマートハウスも「ITを活用して快適な暮らしを実現する住宅」という意味合いで使われるケースも増えてきました。時代の変化に伴って、スマートハウスとIoT住宅が近いものになっているといえるかもしれません。
スマートハウスのメリットは?
スマートハウスを導入することで得られるメリットを順番に紹介します。
電気代を節約できる
スマートハウスでは電気使用量を抑えられることに加え、太陽光発電システムで自家発電できるため、電気代を節約できるのが大きなメリットです。余った電気を電力会社に買い取ってもらえば、売電収入を得られる可能性もあるでしょう。
また、発電した電力を家庭用蓄電池に蓄えておけば、夜間や停電時に利用することもできます。
エネルギーを効率的に使うことができる
スマートハウスは消費エネルギーを「見える化」できるため、エネルギーを効率的に使えるようになり、環境にやさしい暮らしを送れるのもメリットです。
人がいないときは自動的に照明を消す、快適な温度になったら空調の運転を切り替えるなど、快適な暮らしを維持しながら環境にも配慮できることがスマートハウスの優れているポイントです。
補助金を活用できる
太陽光発電システムの設置や家庭用蓄電池、HEMS(ヘムス)の導入など、スマートハウス化には大きな初期費用がかかります。
多くの自治体では、こうした初期費用を支援する補助金制度を設けています。制度を上手に活用すれば、コストを抑えながらスマートハウスを導入できるでしょう。
2024年9月現在、スマートハウス自体を対象とした国の補助金は運用されていないものの、高性能な省エネ住宅に対する各種補助金は利用できる可能性があります。あらかじめ制度要件をチェックしておくのがおすすめです。
スマートハウスのデメリットは?
続いて、スマートハウスの導入検討時に気をつけたいデメリットも見ていきましょう。
初期費用が高くなりやすい
スマートハウスは多くの設備が必要なため、標準的な住宅に比べて初期費用が高くなりやすい点がデメリットです。上で紹介した自治体の補助金制度などを利用する方法はあるものの、それだけでは初期費用を賄いきれません。
ただし、電気代の節約などにより将来のコストを削減できる可能性もあるので、長期的な経済性も含めて検討したほうがよいでしょう。
メンテナンスや設備交換に費用がかかる
上記の設備は設置して終わりというわけではありません。性能を維持するには、清掃や部品交換といった定期的なメンテナンスが欠かせません。
加えて、太陽光発電システムの設備は一定期間で交換が必要です。パワーコンディショナと呼ばれる設備は10年強、太陽光パネルも20〜30年程度で寿命を迎えるため、交換費用がかかる点にも注意しましょう。
プライバシーやセキュリティの面で心配がある
スマートハウスは、さまざまな設備や家電がインターネットに接続されているのが便利な反面、コンピューターウイルスによる攻撃や個人情報の漏えいなどのリスクがある点に注意が必要です。セキュリティ対策は万全にしておきましょう。
互換性がなかったり陳腐化したりする心配がある
多様なIoT機器や住宅設備を導入するスマートハウスでは、複数のメーカーの製品を組み合わせて使う例がほとんどです。そうなると一部のシステムで互換性が問題になる場合もあるでしょう。連携がうまくいかず、せっかくの機能を使いこなしきれないかもしれません。
IoT技術は日進月歩であり、最新システムを導入してもあっという間に陳腐化するリスクもあります。今後のアップデートのしやすさも考慮して、メーカーやシステムを選ぶことも大切です。
停電時の影響が大きい
オール電化のスマートハウスでは停電時の影響が大きくなります。太陽光発電と蓄電池の組み合わせにより、ある程度の電力を確保することはできますが、長期間にわたって停電が続くと生活への影響は避けられません。停電時に対する備えについても検討しておきましょう。
スマートハウスに必要な設備とは?
住まいをスマートハウスにする場合、次に挙げる設備を準備する必要があります。
太陽光発電システム | ・創エネのために欠かせない設備 ・屋根に設置した太陽光パネルで発電を行い、住まいで使用する電気の一部を賄う ・余った電気は電力会社に売却し、売電収入を得ることもできる |
家庭用蓄電池 | ・太陽光発電システムで得た電気を蓄えておき、発電できない夜間や悪天候時に電力を供給する ・停電時のライフライン確保が可能となり、地震や台風などの災害対策としても有効 |
HEMS(ヘムス) | ・家電や住宅設備の自動制御や、電力・ガス使用量の見える化により、エネルギーを管理する「ホーム・エネルギー・マネジメント・システム」 ・エネルギー消費の最適化に欠かせない |
全館空調システム | ・家全体の冷暖房や換気をまとめて管理するシステム ・部屋ごとにエアコンなどを設置する必要がなく、効率的に快適な室内環境を保つことができる |
スマート家電 | ・インターネットに接続できる家電 ・HEMSと連携した自動制御により、エネルギー消費を最適化できる |
まとめ
スマートハウスは省エネで環境にやさしく、快適な住環境を実現できるなど多くのメリットがあります。しかし、初期費用やメンテナンスコストがかかること、機器の互換性やセキュリティ対策を考慮しなければならないことなど、デメリットもあるのが実情です。
メリット・デメリットの両面をしっかり理解したうえで、自分たちのライフスタイルや住宅にかけられる予算なども踏まえて、導入を検討するようにしましょう。
■監修_サーラ住宅/担当者
WRITER PROFILE
藤田一太郎
宅地建物取引士・再開発プランナー
大手不動産デベロッパーで都心商業施設の運営管理・企画・リーシングなどを経験。再開発コンサルでリーシング・契約業務、都心や地方の再開発企画業務に携わる。現在は、不動産ライターとして活動する一方、日本茶インストラクターとして茶農家メンバーとしても活動中。