がけ条例とは?内容や適用されやすい土地の特徴などわかりやすく解説

がけ条例とは?内容や適用されやすい土地の特徴などわかりやすく解説

崖に面した敷地に建物を建てる場合、自治体のがけ条例による制限を受ける可能性があります。がけ条例は自治体によって内容が異なるものの、制限が適用される土地の特徴はおおむね共通です。

この記事では、がけ条例とはどのようなものかわかりやすく解説するととともに、がけ条例が適用されやすい土地の特徴を3つ紹介します。がけ条例の対象地を購入する際の注意点も解説するので、崖沿いの土地の購入を検討している方はぜひ参考にしてください。

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がけ条例をわかりやすく解説

全国の自治体で設定されているがけ条例ですが、具体的にどのような内容を定めた条例なのでしょうか。条例の主な内容をわかりやすく解説するとともに、愛知県豊橋市の事例を紹介します。

がけ条例とは?

がけ条例とは、崖や急傾斜地に面している土地の安全利用を目的に、自治体が使い方の制限を定めた条例のことです。崖や急傾斜地は、大雨が続いたときなどに崖崩れや土砂災害のリスクがあります。がけ条例は、こうしたリスクを軽減するために定められるのです。

条例の詳細な内容は自治体ごとに異なるものの、一般的に次のような内容が定められています。

・崖の高さや傾斜角度に応じた建築の制限

・建物建築時の擁壁(ようへき)工事や地盤改良工事の義務付け

・建築可能範囲の限定

所有地や購入を検討している土地が崖や急傾斜地に面している場合、がけ条例による制限対象になるのか、なる場合にはどのような制限を受けるのか、あらかじめ把握しておきましょう。

豊橋市におけるがけ条例の内容

がけ条例の具体例として、サーラ不動産が拠点としている愛知県豊橋市の事例を紹介します。豊橋市のがけ条例は、愛知県建築基準条例第8条(愛知県のがけ条例)を当てはめる形で定められています。内容の詳細は次のとおりです。

豊橋市におけるがけ条例の内容(愛知県建築基準条例第8条)
(1)高さが2mを超える崖(勾配が30°を超える傾斜地)をそのままの状態にして建築する場合には、崖の始まり(崖下の場合は崖の最上部、崖上の場合は崖の最下部)から、崖の高さの2倍以上距離を置くこと。
(2)崖に擁壁を設ける場合は、崖に近接する場所に建物を建ててもよい。ただし、擁壁の確認申請を行うこと。
ダイアグラム

AI 生成コンテンツは誤りを含む可能性があります。
(出典)豊橋市「マイホームガイド
(出典)愛知県「愛知県建築基準条例・同解説(平成27年6月1日改訂版)

がけ条例が適用されやすい土地の特徴3選

前述のとおり、がけ条例の内容は自治体によって異なります。ただし、がけ条例が適用されやすい土地には共通の特徴が3点あります。

①崖の高さが2m以上ある

②崖の傾斜角度が急である

③崖から建築予定地が近い

購入予定の土地がこれらの特徴に当てはまる場合、がけ条例の適用範囲をあらかじめ確認しておくと安心でしょう。以下では、各項目の詳細を解説します。

①崖の高さが2m以上ある

そもそも、条例の対象となる崖の高さが自治体によって異なりますが、愛知県をはじめとする多くの自治体で「崖の高さが2m以上」の場合、制限対象とされています。なお、神奈川県や福岡県のように「高さ3m以上」を制限対象とする自治体もあるため、お住まいの自治体の規定を確認しておきましょう。

②崖の傾斜角度が急である

坂道

傾斜角度によっても、がけ条例の対象となるか否かが変わります。崖には明確な定義があるわけではなく、建築全般の根拠法である建築基準法でも、詳細な角度は特に定められていません。

しかし、自治体のがけ条例では「傾斜角度30°以上」を崖と定義し、がけ条例の対象としているケースが大半です。30°以上の急傾斜地に住宅を建てる場合は、がけ条例の確認が必要と考えたほうがよいでしょう。

③崖から建築予定地が近い

崖と建築予定地の距離によっても、条例の適用を受けるかどうかが変わってきます。当然、崖に近いところに建物を建てるのは危険と判断され、崖の上下または崖そのものから一定距離までは建築が制限されることがあります。先述の愛知県豊橋市の事例のように、崖から建物までの水平距離を崖の高さの2倍以上確保しなければならない、というのが一般的な制限内容です。

ただし、土砂が崩れないように擁壁を整備している場合は、制限が大幅に緩和される可能性があります。

がけ条例が土地に与える影響

がけ条例の対象となる土地であっても、制限の範囲内であれば建物を問題なく建築できます。しかし、条例が適用されることによる影響を理解しておく必要があるでしょう。ここでは、考えられる影響を4つ紹介します。

建築できる建物に制限がかかる

がけ条例が適用されると、崖から一定距離までは建物を建てることができません。土地面積に対して実際に利用できる面積が小さくなるため、建てられる建物の建築面積や床面積も小さくなる可能性があります。用途地域による建ぺい率・容積率の上限と併せて、希望する広さの住宅を建てられるか事前にチェックしましょう。

建築時に追加費用が発生する

擁壁

がけ条例の対象となる土地、かつ地盤が弱い場合には、新たに擁壁を整備しなければならないこともあります。擁壁の新設には数百万円かかるケースもあり、大きな費用負担を見込まなければなりません。たとえ土地代が安く済んでも、擁壁工事を含むトータルでは費用がかさむ可能性もあるため、事前に擁壁設置の必要性は十分確認しておきましょう。

また、すでに擁壁が設置されている場合でも、補修が必要となることもあります。後述のように、既存の擁壁の状態もしっかりチェックしておくと安心です。

災害リスクへの配慮が求められる

土砂崩れ 土砂災害 がけ崩れ 台風 災害

がけ条例が定められている理由は、崖地がほかの土地に比べてリスクがあるからです。近年は梅雨時期の集中豪雨や台風による大雨などにより、全国各地で毎年のように大規模な土砂災害が頻発しています。崖崩れが起きれば、建物そのものが埋まってしまうこともあります。

がけ条例の対象地に家を建てる場合、家族の命や大切な資産を守るため、こうした災害リスクへの配慮が強く求められるでしょう。

土地の資産価値が下がることがある

がけ条例にかかる土地は、建築制限がかかることや擁壁整備に費用がかかる可能性があることなどから、通常の土地に比べて資産価値が低くなりがちです。あらかじめ強固な擁壁が築かれているなら、それほど問題にはなりませんが、新たに崖地を購入する場合は資産価値への影響も確認しておきましょう。

がけ条例の適用範囲を確認する方法

【住宅 イメージ】

購入したい土地ががけ条例の対象なのかどうかわからない場合、次の3つの方法で確認するとよいでしょう。

自治体の窓口やWebサイトで確認する

購入したい土地が所在する自治体のWebサイトをチェックすれば、がけ条例の適用条件を知ることができます。条件を見ても判断できない場合、自治体の建築指導課などの窓口に問い合わせると詳細の確認が可能です。

地元の不動産会社へ問い合わせる

近隣の物件の取引実績が豊富な地元の不動産会社なら、自治体のがけ条例についても精通している可能性があります。また、不動産会社はエリアの土地情報も多数持っているので、近隣でがけ条例の適用を受けない土地を紹介してもらえるかもしれません。

重要事項説明書を確認する

不動産会社(宅地建物取引業者)から購入する場合や不動産会社の仲介を受けて購入する場合には、契約前に宅地建物取引士による重要事項説明が行われます。取引する土地ががけ条例の対象である場合、重要事項説明で言及があるはずなので、他の項目とともに漏れなく確認しておきましょう。

地盤調査や測量の結果を確認する

崖の高さや傾斜角度が条例の適用条件と近い場合、適用の有無や厳密な適用範囲を知るには、地盤調査や測量が必要になります。自治体や不動産会社に問い合わせても明確にわからない場合には、地盤調査や測量が行われているかを確認し、結果の開示を不動産会社や売主へ依頼しましょう。

建築を依頼する予定の建築業者に相談する

擁壁などの安全性については一級建築士等が判断するため、実際に建築確認を出し、工事を行う業者にも相談しましょう。

がけ条例が適用される土地を購入する際の注意点

検討した結果、がけ条例が適用される土地を購入するという判断になった場合、次の5つの注意点に気をつけましょう。

擁壁の状態を確認する

住宅地の擁壁

すでに擁壁が設置されている場合、擁壁の状態を確認しておくことが重要です。具体的には、次のポイントを確かめておきましょう。

・擁壁が建設された時期

・ひび割れの有無、排水状況

・建築確認申請の実施有無

・検査済証の有無と内容

擁壁は建築確認申請の対象となるため、建築時に申請が行われているか、当時の検査済証が残っているかというのは、擁壁の安全性を判断する際の有力な基準になります。

建築可能範囲を確認する

がけ条例が適用される土地で問題になるのが、どの範囲まで建物を建てられるのかという点です。愛知県豊橋市の事例であれば、崖からの距離が崖の高さの2倍以上となるところにしか建物を建てられません。

この規定も自治体によって異なるため、事前に地元の不動産会社などへ確認しておきましょう。

追加工事にかかる費用を把握しておく

崖地に家を建てる場合、擁壁の整備や改修にかかる費用、地盤補強にかかる費用などの追加費用が発生する可能性もあります。場合によっては数百万円の支出となり、資金計画に大きく影響することもあるでしょう。事前に追加費用がいくらかかるのか把握しておくとともに、予算に余裕を見ておくのがおすすめです。

災害リスクを十分に理解しておく

土砂災害警戒区域マップと陶器の家

先述のとおり、崖地は土砂災害のリスクが他の土地よりも高めです。崖地に家を建てる場合には、自治体のハザードマップなどを確認し、災害リスクができるだけ低い場所を選ぶようにしましょう。また、擁壁を整備したり崖側の外壁を強化したりするなど、災害に強い家づくりを検討する必要があります。

契約内容をしっかりチェックする

がけ条例が適用される場合、売買契約締結前の重要事項説明において言及があります。条例対象である旨の説明を受けたら、建築可能範囲がどうなっているのか、擁壁工事や地盤補強工事などが費用に含まれているのかなど、契約内容の詳細を確認しておきましょう。

がけ条例が適用される土地を取引する際のポイント

がけ条例が適用される土地を購入する際には、他にも意識したいポイントがあります。取引時には次の3点を心がけて、後悔のない家づくりを実現しましょう。

現地を自分の目で確認する

【住宅 イメージ】

図面で崖の存在を認識していたとしても、実際に現地を見てみなければ状況はわかりません。気になった土地があったら、必ず事前に現地を訪れ、崖の高さや位置、既存の擁壁の状態などをチェックしておきましょう。

自治体の条例の具体的な内容を理解する

繰り返しになりますが、がけ条例の細かな内容は自治体によって異なります。崖地に家を建てるのであれば、その自治体の条例における制限の内容をしっかり理解しておくべきです。基本的な内容が頭に入っていれば、自治体窓口や不動産会社に相談する際も、細かい点まで具体的に確認することができます。

信頼できる専門家に相談する

がけ条例についての理解を深めることは大切ですが、自分だけの判断で計画を進めるのは危険です。認識違いを避けるためにも、信頼できる専門家に相談しながら進めることをおすすめします。がけ条例に関する相談先と主な相談内容は次のとおりです。

相談先主な相談内容
不動産会社土地売買に関する情報の問い合わせ、がけ条例が土地取引に与える具体的な影響
建築士建築可能範囲、建物の設計、擁壁の安全性に関するアドバイス
地盤調査会社地盤の強度や既存の擁壁の安全性調査、リスクの評価
自治体の窓口がけ条例の具体的な規定内容、申請手続きのやり方
土地家屋調査士(測量士)土地の高低差の測量から、がけ範囲の特定に関する相談

まとめ

がけ条例が適用される土地には、建築可能範囲などの制限や土砂災害のリスクなど、慎重に確認すべきポイントが多くあります。しかし、それぞれのポイントを正しく理解することで、安全で満足度の高い土地取引を行うことができるでしょう。

豊橋エリア・浜松エリアを中心に展開するサーラ不動産は、地元のがけ条例についても豊富な専門知識と経験を備えています。多くの土地情報をベースに、お客様の理想のマイホームを実現できる土地探しを全力でサポートいたします。同エリアで土地探しからの家づくりを検討している方は、ぜひサーラ不動産までお気軽にお問い合わせください。

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■監修_サーラ不動産/担当者_資格:宅地建物取引士

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WRITER PROFILE

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藤田一太郎

宅地建物取引士・再開発プランナー

大手不動産デベロッパーで都心商業施設の運営管理・企画・リーシングなどを経験。再開発コンサルでリーシング・契約業務、都心や地方の再開発企画業務に携わる。現在は、不動産ライターとして活動する一方、日本茶インストラクターとして茶農家メンバーとしても活動中。

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