電気の仕組みを知り、電気のこれからを考えてみる
電気料金の高騰など、電気を取り巻く環境は日々変化しています。
未来の人類に大きな影響を及ぼす地球温暖化を食い止めるためのカーボンニュートラル実現に向けて、太陽光発電などの再生可能エネルギーへの需要はますます高まるでしょう。
お住まいでの発電システムや電気の使用方法に新たな価値を生むことで、地球環境や社会のインフラに貢献する可能性もあります。
改めて電気の仕組みを知り、電気の未来を一緒に考えていきましょう。
目次
電気のいま
「パリ協定」で定まった方向性
近年、世界的に問題となっている異常気象や気候変動。
その原因となっている二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを抑えるため、2015年に温室効果ガス削減に関する国際的な取り決めを話し合う「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)」で「パリ協定」が合意されました。
2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組みでは、今世紀後半のカーボンニュートラル(脱炭素社会)実現を掲げています。
日本では2020年10月の臨時国会で、当時の菅義偉総理が所信表明演説で、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「2050年カーボンニュートラル宣言」を行いました。
2021年1月時点で、日本を含む124カ国と1地域が2050年までのカーボンニュートラル実現を表明。これらの国の世界全体のCO2排出量に占める割合は37.7%に上ります。中国も2060年までのカーボンニュートラル実現を表明しています。
環境や情勢から必要とされる電気
温室効果ガス削減に効果的な取り組みとして、再生可能エネルギーや電気自動車の利用、蓄電池の普及が挙げられます。
2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰が、さらに拍車をかけています。
しかし日本では、主要先進国の中でも再生可能エネルギーの導入が遅れています。
発電コストが高い上に、地震や台風、津波といった自然災害が多く発電設備が被害を受けすく、電力の供給量が安定しないという問題が背景にあります。
さらに2011年の東日本大震災による福島第一原発事故の影響から、原子力発電所の再稼働が難しい状況にあり、環境負荷の少ない電気を安定して供給できる仕組みが必要とされています。
理想の仕組み
供給と需要のバランス
電気は基本的に蓄えることができないため、供給と需要のバランスをとる必要があります。一方で、太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーは天候や時間帯によって発電量が左右され、不安定です。
例えば太陽光発電で電力の自給率を高めることは、災害時の電力不足や停電時のリスクを減らすことにつながります。エネルギー価格の高騰が続いても、太陽光発電であれば影響を最小限に抑えることができます。
日中では使いきれないほどの電力をつくり、余った電力を蓄電システムに貯めることで、夜間や非常時に電力を活用する―。
そんな電気を自給自足する施設・設備が普及するとともに、地域エネルギーの過不足に応じて電力消費をコントロールし、電力供給と需要のバランスがとれる状況が理想的です。
電気の新たな価値
電気には私たちが知っている電力量【kWh価値】に加え、近年は容量(供給力)【kW価値】、調整力【△kW価値】、【環境価値】(CO2フリー)も注目されています。
1、電力量【kWh価値】
太陽光発電で蓄えた電力を売ることで収益を得られますが、固定価格買取制度(FIT制度)により買取価格が固定で保障されていた10年が経過(卒FIT)すると、売電価格が大幅に下がってしまいます。
2、容量【kW価値】(供給力)
蓄電池などによって大容量の電気を蓄えられる環境が家庭などの身近に実現し、新たな電力市場が開設されています。
蓄電設備には大きく分けて蓄電池とV2Hがあります。
蓄電池は選べる種類も多く、車は不要で単独で使用できます。ただ、消防法の規制で最大10kWhと容量が少なく、使用によっては家庭の一部にしか電力を供給できません。
V2H(Vehicle to Home)は電気自動車やプラグインハイブリッド車とセットで蓄電できるシステムで、蓄電量は35~60kWhと大容量です。ただ、電気自動車の購入が不可欠で、太陽が出ている時間帯に車が止まっていないと充放電できません。
3、調整力【△kW価値】(デマンドレスポンス)
デマンドレスポンス(DR)とは、電力の需要量を供給量に合わせる手法を意味します。地域エネルギーの過不足に応じて電力消費をコントロールできます。
急に電力の需要が増加すると供給が追いつかなくなり、反対、電力の需要が減少すると電気が余ってしまいます。
電力の需要と供給のバランスを取るのは難しく、こうした課題を解決するためにDRがあります。
DRには「電気料金型」と「インセンティブ型」の2種類があります。
電気料金型は電力の需要がピークになる時間帯に料金を値上げするなどの取り組みをします。料金が値上げされると消費者はその時間帯の使用を極力避けるため、電力需要の逼迫を解消できます。
インセンティブ型(ネガワット取引)は電力会社の呼びかけに対して使用量を制御することで、消費者がインセンティブをもらう仕組みです。取り組みに対する対価がもらえるため、消費者にとって節電の効果が得やすいのが特徴です。
これらDRには、上手く活用すれば電気代を抑えられる、電気の使用を見つめなおせるといったメリットがある一方で、電気使用量を把握する必要がある、条件に縛られるといった注意点があります。
4、環境価値(CO2フリー)
太陽光発電などによってCO2を排出しない再生可能エネルギー電源に由来する「CO2フリー価値」付きの電気を指します。
1年間に排出したCO2の量を企業が国に報告する制度「地球温暖化対策の推進に関する法律」(温対法)の「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」において、利用者はCO2排出係数をゼロとして排出量を算定することで、環境マネジメントに活用することができます。
また、有効活用する取り組みとして、地域で発電した再生可能エネルギー由来の電力を、環境価値と共に電気事業者が買い取り、同じ地域に供給する仕組みが注目されています。
環境価値市場での取引増加や、地域のブランディングといった地域貢献にも繋がります。
家庭で新たな価値をつくる
電気やガス、太陽光発電を組み合わせることで、家庭で新たな価値を創出することができます。
余剰電力を活用する
「おひさまエコキュート」は電気を効率的に自家消費する給湯器です。
太陽光発電の余剰電力を利用して、主に昼間に沸き上げを行うため、光熱費削減や温室効果ガス削減に貢献します。
太陽光発電を行わない天候の悪い日も、昼間の沸き上げ時間帯にご契約の電力を活用し、沸き上げを行います。
ガスとの併用で省エネ対策
ハイブリッド給湯器は電気とガスの両方を使って、効率よくお湯を沸かすシステムです。
代表的な「エコワン」は生活シーンを学習するGXEマイクロチップを搭載しており、電気とガスを賢く使い分けるため、給湯にかかる光熱費を大幅に抑えます。
二酸化炭素の排出量を限りなく抑えるため環境にも優しいです。
社会インフラの維持に貢献する
太陽光発電やエネファームが発電設備として、蓄電池や電気自動車、V2Hが蓄電設備として、地域エネルギーの過不足に応じて電気を出し入れでき、DRに対応することができます。
2022年3月16日に発生した福島県沖を震源とする最大震度6強の地震の際には、東北や東京電力管内で電力の需給ひっ迫の恐れがありましたが、政府からの需要削減の要請もあり、DRに取り組む電力の利用者をはじめ、多くの人や企業が電力購入量の抑制に協力し、大規模停電は免れました。
人々が安心した生活を送るため、安定した電力の供給は必要不可欠です。
利用者が自らの意思で社会貢献を実現できる取り組みとして、DRには社会的な関心と注目が集まっています。
おわりに
電気は人々の生活を支え、日々の暮らしをさらに豊かにしていくうえで欠かせません。
カーボンニュートラル実現に向けたご家庭内からの取り組みが、時には社会全体を支える一助にもなる可能性を秘めています。
サーラでは、カーボンニュートラルな暮らしを推進するためにさまざまな取り組みを実践しています。お気軽にお問い合わせください。
■監修_サーラエナジー/エネルギー事業、暮らし事業担当者
WRITER PROFILE
由本 裕貴
1983年3月20日、愛知県豊川市生まれ。
御津高校、愛知大学を経て、2005年に日刊スポーツ新聞社入社。プロ野球やサッカー日本代表を担当し、2014年に東愛知新聞社へ転職。2021年からフリーに転向し、翌年から東日新聞ライターとして東三河のニュースや話題を追っている他、スポーツマガジンやオカルト雑誌などでも執筆。豊川商工会議所発行「メセナ」の校正も請け負う。著書に「実は殺ってないんです 豊川市幼児殺害事件」「東三河と戦争 語り継ぐ歴史の痕跡」「訪れたい 東三河の駅」がある。
家族は妻と長男。趣味はスポーツ観戦、都市伝説の探求。