老後資金はいくらあれば安心?老後資金を備える方法とは(2024年2月最新版)
少し前に「老後2,000万円問題」という言葉が世間を騒がせましたが、平均寿命が伸びた今、人生100年時代と言われる超高齢化時代に突入しようとしています。
老後資金形成が必要ということは分かっていても、一体いくら必要なのか漠然として分からず、どうしたら良いのか困っている方も多いのではないでしょうか。
もちろん大金が準備できれば安心ですが、今の生活がある中で老後の資金を貯めることは簡単ではありません。
それでも少しでもゆとりある老後を送れるように、まずは自分に必要な老後資金はいくらなのか、公的年金だけで足りるのかどうかをきちんと把握しておくことが大切です。
そのうえで、老後のために少しでも今できることをはじめていきましょう。
目次
老後資金は一体いくらあれば安心?
老後の準備をするにあたって重要なのは、自分に必要な老後資金がいくらなのかをしっかり把握することです。現在の環境と将来のイメージ、それにかかるお金を明確にしましょう。
世帯別に必要な老後の生活費はいくら?
老後というと、退職後にあたる60~65歳からの人生をイメージする人が多いでしょう。では、老後に必要な資金について、総務省の「家計調査年報(令和4年)」を参考に世帯別に見ていきましょう。
65歳以上のご夫婦2人の場合
65歳以上の夫婦のみの無職世帯の実収入平均は24万6,237円。うち非消費支出(税金や社会保障等)を差し引いた可処分所得は21万4,426円でした。消費支出は23万6,696円となっています。約2万2000円が不足しています。
この結果から、65歳以上の夫婦二人暮らしの場合は1か月平均23万円程度のお金が必要なことが分かります。
65歳以上の独身・一人暮らしの場合
65歳以上の単身無職世帯の場合、実収入は13万4,915円で可処分所得は12万2,559円。消費支出は14万3,139円で、約2万円が不足しています。
この結果から、独身・一人暮らしの場合は1か月平均14万程度のお金が必要なことが分かります。
ゆとりある老後にはもっと老後資金が必要になる
子どもの独立で教育費などの支出は減りますが、住宅費・食費・水道光熱費・日用品費など生活に必要なお金は、老後も変わらずかかります。住宅が賃貸の場合、持ち家と比べて住宅費が増える傾向にあるため、もっと資金が必要です。
また旅行やレジャー、親戚付き合い、趣味など、退職後の日常をより充実させた生活を送るには、さらに資金が必要となります。
見落としがちなのが臨時出費です。長年住んだ住宅のリフォーム、冠婚葬祭、医療や介護費など、生活費以外に必要な予想外の支出が発生することもあるでしょう。
安心して老後を過ごすためにやるべきこと
安心して老後を過ごすために、今から何をやっておけば不足分を減らすことができるのかを解説します。
老後のライフプランを考える
老後にかかる費用は、それぞれの生活スタイルによって異なります。老後をどのように過ごしたいかを考えて、ライフプランを書き出してみましょう。老後に必要となる収入と支出を当てはめて、具体的に想像することが大切です。
公的年金の金額を把握する
老後資金と聞いて最初に思い浮かぶのは公的年金ではないでしょうか。年金だけで生活費がカバーできるのであれば、安心ですよね。
日本の公的年金は大きく分けて2つ、国民年金と厚生年金があります。
国民年金
国民年金は20歳から60歳までのすべての人が加入する年金です。保険料を納めることで、原則65歳以降に老齢年金を受給できます。
国民年金額は、保険料を納めた月数に比例して計算ができます。20歳~60歳までずっと支払っていれば、満額の年79万5,000円(令和5年度)受け取れますが、仮に半分の期間20年しか納めていない場合、国民年金額も39万7,500円と半減してしまいます。
厚生年金
厚生年金は、会社員や公務員として働く人が加入する年金です。こちらは国民年金に上乗せされる形で受給できます。
厚生年金の保険料は毎月の給与などで変わるため、保険料が高いほど将来受け取る年金も高くなります。
実際に給付される公的年金額はいくら?
厚生労働省による「厚生年金保険・国民年金事業の概況(令和4年度)」によると、令和4年度の年金受給額は国民年金が約5万6,000円、厚生年金(国民年金を含む)が約14万5,000円でした。会社員(厚生年金)と専業主婦(夫)(国民年金)の夫婦の場合、合わせて20万1,000円の年金額となります。
前述のとおり、夫婦二人暮らしは1か月平均23万円、一人暮らしの場合は平均14万程度の支出が必要であることを思うと、公的年金だけで老後資金をまかなうことは難しいということが分かります。
厚生年金で一人暮らしの場合、年金だけで毎月の生活をまかなうことができそうですが、突然の臨時出費含め、ゆとりのある生活ができるかという点に関しては不十分かもしれません。
また自営業などで厚生年金に加入していない国民年金だけの方は、公的年金だけでは毎月の生活費もカバーできないことが分かります。
また60歳で退職した場合、老齢年金が受け取れる65歳まで5年間の空白期間があります。その間の生活費も必要となることは意識しておきましょう。
ゆとりある老後資金はどうやって準備する?
公的年金だけでは、ゆとりある老後を過ごすことが難しいことが分かりました。
さらにこれからも少子高齢化が進むといわれています。公的年金は、60歳までの現役世代が納めた保険料がそのまま年金受給者へ支給されている割賦方式であることを考えると、今後の人口統計次第でさらに受給額が少なくなることも考えられます。
そんな状況を踏まえると、公的年金だけに頼らず、自分の力で老後資金を形成する重要性が分かりますね。こちらでは、公的年金以外の年金をご紹介しましょう。
保険を活用する「個人年金保険」
公的年金以外の老後費用で以前から知られているのが、貯蓄型の民間保険商品である個人年金保険です。
毎月保険料を一定の年齢まで払い込み、受給開始時期になると年金形式や一括で受け取ることができます。預貯金とは異なり、払い込んだ保険料は簡単に引き出すことができないため、自然と老後資金を貯めることができるでしょう。また年末調整や確定申告時に「個人年金保険料控除」や「一般生命保険控除」が適用されるため、所得税控除対象となるメリットもあります。
資産形成をする「iDeCo」
「iDeCo」の愛称で知られる「個人型確定拠出年金」は、2001年にはじまったばかりの私的年金制度です。
国民年金の加入区分によって拠出できる金額が異なり、2024年2月現在、自営業は月6万8千円、会社に企業年金がない会社員や専業主婦(夫)は月2万3,000円までと決まっています。
掛け金が控除対象となるため、個人年金よりも節税効果が大きいのが特徴です。また運用利益が非課税であることに加え、受け取り額も所得税控除の対象となり、大きな控除が受けられます。
運用商品は、大きく分けて元本保証商品と投資信託があります。
安定して老後資産を形成したい方は元本保証型、積極的に投資をして資産を増やしたい方には投資信託が向いています。投資信託は元本割れのリスクも伴いますが、数十年という長期間にわたって投資をすることで大きな利益を生み出せる可能性もあります。しかし上手に運用を進めるためには、投資の知識を使い情勢に合わせて商品を選び変えるなどの手間が必要となることは覚えておきましょう。
企業型確定拠出年金(企業年金)を利用する
会社員の場合、個人型確定拠出年金であるiDeCoとは別に「企業型DC」と呼ばれる企業型確定拠出年金を導入している企業もあります。企業年金の一種でもあり、退職金制度として導入されているため、掛け金は企業が負担します。さらにiDeCoでは個人負担となる手数料も企業型DCの場合企業が負担してくれます。
さらに企業型DCには「マッチング拠出」と呼ばれる、企業の掛け金以外に加入者自身も拠出できる制度もあります。
ただし運用商品は会社が決めた商品ラインナップの中から選ぶことになるため、希望の商品がない場合も。その場合はマッチング拠出ではなく、iDeCoに加入するという方法もあります。
参照:今さら聞けない、iDeCoってなに?iDeCoについてわかりやすく解説します! | サーラフィナンシャルサービス株式会社 (sala-fs.co.jp)
老後資金の貯め方、増やし方
私的年金以外でも老後資金を形成することもできます。自分のライフスタイルに合った方法を見つけましょう。老後資金形成にピッタリな主な方法をご紹介します。
収入から少しずつ将来に向けた準備をする「財形制度」
勤務先の企業が毎月一定額給与天引きで行うのが財形制度です。給与から天引きのため、貯める意思が弱い方でも強制的に貯められるのが特徴です。
主に、用途を選ばない「一般財形貯蓄」、マイホーム購入やリフォームなどに使える「財形住宅貯蓄」、60歳以降に年金として受け取ることができる「財形年金貯蓄」があり、老後の生活資金には財形年金貯蓄が適しているでしょう。財形住宅貯蓄と合わせて550万円まで利子等が非課税になります。
「新NISA」で今ある資産を運用する
2024年から新しいNISA制度が導入されました。新しいNISAは、年間投資枠が120万円に拡大。
さらに、非課税保有期間が無期限となり、長期的な投資ができるようになりました。使いやすくなったNISAを活用して、投資や将来の資産形成をはじめてみましょう。
「退職金」をどう使うか
定年が近づいてくると気になるのが退職金です。
企業や規模によって金額は異なりますが、厚生労働省「令和3年賃金事情等総合調査」によると、大企業の男性平均退職金額は、大学卒が約2230万円、高校卒が2,017万円。中小企業男性の場合、大学卒1,118万円、高校卒1,031万円となっています。
退職金は年々減少傾向が続いており、今の現役世代がもらえる退職金額はより低くなることも考えられます。つまり老後資金に退職金だけを当てにするのは危険と言えるでしょう。
住まいを資金化する「ハウスリースバック」
まとまった資金が必要となった際に、お客さまが保有するご自宅を資金化するという方法があります。ハウスリースバックといって、近年高齢者世帯を中心に住み替え、 建て替え 資金の確保等を目的として、リースバックを活用した不動産取引が徐々に増加傾向にあります。
住宅のリースバックとは、住宅を売却して現金を得て売却後は毎月賃料を支払うことで、住んでいた住宅に引き続き住むというサービスです。
お客さまのメリット
①人知れず売却することができ、そのまま住み続けられる。引っ越し不要。
②ご自宅の売却により、まとまったお金が手に入る。
③将来の相続対策ができる。
④固定資産税がかからなくなる。
⑤後日の買戻しが可能。
参照:インフォメーション|住まいのリースバック新サービス「サーラのほっとリースバック」の提供を開始いたします中部ガス不動産株式会社 サーラ (sala.jp)
豊かな老後のため、今から老後資金形成に動き出そう
生活費だけでなく、さまざまな状況に応じて必要となる老後資金。ゆとりある老後のためには、公的年金に頼るだけでなく、今から資産を形成することが大切です。
今回、老後資産に適した金融サービスをご紹介しましたが、まずは公的年金額を確かめて、老後にいくら必要なのかを把握しましょう。その上で自分に合う資産形成方法を選び、今の生活に無理のないよう、コツコツと積み立てていけると良いですね。貯金が苦手な方でも、月々小額を長期間積み立てるのであれば、無理なく続けることができるでしょう。
早い段階から資産形成をはじめて、快適で豊かな老後をめざしましょう。
老後資金についてよくある質問Q&A
老後資金2000万円問題ってなに?
A、老後資金2000万円問題は、「夫65歳以上、妻60歳以上の無職夫婦世帯が、平均寿命まで生きた場合に、収入-支出=-2,000万円となる」という意味です。「定年退職後の平均寿命を30年と仮定すると、約2000万円が不足する」と、2019年に金融庁が老後資産の報告書を発表したことから話題になりました。
貯金3000万円あったら何年暮らせる?
A、世帯数や収入があるかないかによっても変わりますが、最短で6年、最長で16年程度でしょう。お金をどのくらいで使い切るかは、毎月の生活費によっても異なります。3000万円持っている人は、資産運用の視野を広げて、将来に向けた計画を立てるといいでしょう。
■監修_サーラフィナンシャルサービス/担当者_資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士
WRITER PROFILE
mamhive 芝田ありさ
ライター歴15年。グローバルな視野と高いリサーチ能力、幅広い業界知識を併せ持つ行動派ライターとして、IT・住宅・金融・保険・教育を中心にライティングや取材を行う。得意のIT知識を活かしてホームページ制作も請け負っている。
女性ライターチーム「mamhive(マムハイブ)」に所属。