持ち家と賃貸のメリットや損得などを徹底比較!選ぶべきはどっち?

「持ち家」と「賃貸」どちらを選ぶべきかというのは、住まい選びにおける重要なテーマです。両者にはそれぞれにメリット・デメリットがあるため、どちらがお得とは一概に言えません。なぜなら、ライフスタイルや経済状況によって、最適な選択肢は変わってくるからです。将来のライフプランをイメージして、自分たちに適したほうを選ぶことが、暮らしの満足度を高める秘訣といえるでしょう。
本記事では、持ち家と賃貸の特徴やメリット・デメリットを徹底比較したうえで、選ぶ際の5つのポイントについて深掘りしていきます。

目次
持ち家と賃貸の基本的な違い
持ち家と賃貸どちらを選ぶべきかを見ていく前に、まずは、両者がどのような住居形態なのかを理解しておく必要があります。ここでは、持ち家と賃貸の基本的な違いを見ていきましょう。
持ち家とは?

持ち家とは、自分が所有している戸建て住宅や分譲マンションのことをいいます。購入時や新築時に住宅ローンを組むのが一般的で、借入期間中はローン返済をしながら生活することになります。持ち家の場合、毎年固定資産税や都市計画税を納めなくてはなりません。
また、戸建て住宅ではメンテナンス費用の負担が必要となります。分譲マンションでは、共用部の維持管理や将来の大規模修繕などに対応するため、管理費や修繕積立金の負担が発生します。
賃貸とは?
一方の賃貸は、戸建て住宅・マンション・アパートの賃貸借契約を締結し、オーナーから借りて住む形態を指します。賃貸に住む場合、毎月家賃(物件によっては管理費や共益費も)を支払う必要があります。
普通賃貸借契約(普通借)の契約期間は2年が一般的であり、解約を申し出ない限りは自動更新されるのが基本です。定期賃貸借契約(定借)物件の場合、数年程度の契約期間が決まっており、契約期間を迎えると契約が終了します。※貸主と合意が出来れば、再契約により延長することもあります。
賃貸暮らしでは、入居時に仲介手数料や敷金・礼金、契約更新時に更新料、退去時に原状回復費用などの負担が発生するケースも珍しくありません。
持ち家のメリットとデメリット
先述のとおり、持ち家と賃貸にはそれぞれ異なるメリット・デメリットがあります。まずは、持ち家のメリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。
持ち家のメリット

持ち家は自分の所有物なので、住宅ローンの完済後は資産として手元に残り続けます。土地や建物は現物資産であり、株式や投資信託といった金融資産に比べ、価格が安定している点が特徴です。住んでいるだけで資産形成につながることは、持ち家の大きなメリットといえるでしょう。
住宅ローンの返済負担に不安を感じるかもしれませんが、実際には住宅ローン控除をはじめとする、国や自治体によるバックアップの制度が数多く設けられています。こうした制度は持ち家に特有のものであり、一定程度費用負担が軽減されるのもポイントです。
ローンの借入期間中は返済負担が生じるものの、完済すれば毎月の負担がなくなります。若いうちに住宅ローンで購入し、定年までに完済するプランであれば、老後は住居費をほとんど負担することなく生活できます。これは、老後の大きな安心感につながるでしょう。
また、持ち家は自分に所有権があるため、比較的自由に手を加えることができるのも魅力です。戸建て住宅であれば、内外装のリフォームや間取り変更を含むリノベーション、住宅設備の更新なども自由に行うことができます。分譲マンションの場合、管理規約による制約を受けるものの、専有部内であれば自分好みにカスタマイズすることが可能です。
持ち家のデメリット

持ち家のデメリットとして最初に挙げられるのが初期費用の高さです。購入費用は住宅ローンで賄うのが基本とはいえ、費用の1〜2割が目安とされる頭金や、ローン手数料・保証料、火災保険料・地震保険料、仲介手数料、不動産取得税、登録免許税、印紙税などの諸費用は、原則現金で用意する必要があります。
持ち家でお金がかかるのは購入時だけではありません。住み始めてからは固定資産税や都市計画税を毎年納めなければならないうえ、分譲マンションであれば、管理費や修繕積立金も支払い続ける必要があります。管理費や修繕積立金は、築年数が経過するごとに値上がりするケースもあるため注意が必要です。
戸建て住宅の場合、分譲マンションのような定期的な維持費負担はないものの、建物や設備のメンテナンス費用は自分たちで負担しなければなりません。例えば、標準的な仕様の外壁や屋根であれば、10〜15年に一度の塗り替えが必要となり、1回につき100万円前後(面積や塗料の種類などによって異なる)の費用負担が発生します。
加えて、住み始めてから周辺環境や住み心地に不満を感じたとしても、簡単には住み替えられないというのも持ち家特有のデメリットです。
賃貸のメリットとデメリット
続いては、賃貸のメリットとデメリットについても詳しく見ていきましょう。
賃貸のメリット

持ち家と比較したとき、賃貸は全体的に「身軽」なのがメリットといえるでしょう。まず、持ち家よりも初期費用を安く抑えることができます。賃貸では仲介手数料、敷金、礼金などの初期費用がかかるものの、すべて合計しても家賃の数ヶ月分程度です。なかには敷金や礼金がかからない物件もあり、さらに初期費用を浮かせられる可能性もあるでしょう。
住み始めてからの費用負担が軽いのも賃貸のメリットです。持ち家だとメンテナンスは自分の責任と負担で行わなければなりませんが、賃貸はオーナーの責任で実施します。同様に、固定資産税や都市計画税の納付義務もありません。管理費や共益費といった名目での費用負担はあるものの、持ち家に比べると維持費も安くて済むでしょう。
また、住み替えが比較的容易な点も賃貸ならではの魅力です。住環境に不満がある場合はもちろん、子どもの誕生や成長、転勤などライフステージの変化に応じて、柔軟に住む場所を変えることができます。
賃貸は、収入の増減に合わせた物件の見直しも可能で、家賃を家計の調節弁にできるというのもメリットといえるでしょう。
賃貸のデメリット

賃貸はあくまで「借りて住んでいる」だけなので、住んでいる間はずっと家賃を支払い続ける必要があるのがネックです。
また、家賃をどれだけ支払い続けたとしても、自分たちの資産にはなりません。
「家賃さえ支払うことができれば特に問題がないのでは?」と考える方もいるかもしれませんが、突然の病気やけがで収入が途絶えたときや、リタイア後の年金暮らしでも家賃を支払い続ければならないのは、相当な負担になる可能性があります。さらに、一人暮らしで身寄りのないお年寄りは入居審査が通りにくい傾向にあり、借りられる物件が限られるのが実情です。
賃貸における資金面でのデメリットとしては、将来家賃が上昇する可能性があることも挙げられます。経済動向や近隣エリアの賃料相場などによって家賃が改定されることもあるのです。
また、賃貸は持ち家と異なり、自由に模様替えしたりリフォームしたりすることはできません。退去時に借りたときの状態に戻す「原状回復義務」があるため、できることは限定的です。近年は、入居者がDIYできる賃貸物件も増えてきているものの、選択肢は限られます。
持ち家と賃貸はどちらがお得なのか?
持ち家と賃貸それぞれのメリット・デメリットを見てきましたが、どちらも一長一短であることがお分かりいただけたのではないでしょうか。そこで気になるのが、持ち家と賃貸はどちらが「お得」なのかという点です。以下では、経済性のみならず、さまざまな損得に焦点を当てて、どちらがお得なのか検証していきます。
ライフステージによって異なる両者の損得

どちらがお得かというのは、ライフステージによって変わってきます。持ち家は自分の資産となるので資産形成に役立つほか、老後の住まいの心配をしなくて良いという安定感が魅力。対する賃貸は、ライフスタイルの変化に応じて、好きなタイミングで住み替えられる柔軟性が魅力です。
若いうちは転勤や転職などでライフスタイルが大きく変化する機会も少なくないため、変化に柔軟に対応できる賃貸のほうが「お得」と感じるかもしれません。社会人になって間もない頃は、家計に余裕がない方も多いので、収入の水準に合わせて住み替えができるという点でも賃貸が向いているでしょう。
その後、結婚や出産で家族が増え、落ち着いて暮らしたいと考え始める時期になると、安定感のある持ち家が「お得」な選択肢になってきます。家族が増えると引っ越しの負担が大きくなるうえ、子どもの転校を避けるため、できれば一つの場所にとどまりたいと考える方が少なくないからです。
費用面で見ても、若いうちは、初期費用が安く、住宅ローンの返済負担を負わなくて済む賃貸のほうがお得に感じやすいでしょう。一方、家族が増えて、将来を長期的に見通せるようになると、老後まで安定して暮らせる持ち家に価値を感じやすくなるのです。
コストの観点からみる損得
次に、純粋にコストの観点から、持ち家と賃貸の損得を比較してみましょう。持ち家・賃貸、それぞれにかかる費用を簡単にまとめたものが以下の表です。
・持ち家にかかる主な費用の種類
費用の種類 | 内容 |
初期費用 | 物件の購入費用、仲介手数料、不動産取得税、登録免許税、印紙税、住宅ローン関連費用など |
住宅ローンの金利 | 住宅ローンは金利を上乗せして返済する必要あり金利上昇局面では利払いが増加することも |
固定資産税(都市計画税) | 不動産の所有者に対して毎年課せられる税金。固定資産税は必ずかかり、都市計画税は自治体やエリアによる |
火災保険料(地震保険料) | 火災保険は最長5年一括契約、大半の住宅ローンは融資条件として加入必須。地震保険は任意 |
修繕費 | 内外装や設備のメンテナンスや交換などにかかる費用。マンションは専有部のみの負担 |
管理費※マンションの場合 | マンションの共用部や管理組合などの維持にかかる費用。毎月支払うのが基本 |
修繕積立金※マンションの場合 | マンションの大規模修繕などのため、積み立てておくお金。管理費とともに毎月支払うのが基本 |
・賃貸にかかる主な費用の種類
費用の種類 | 内容 |
初期費用 | 仲介手数料、敷金、礼金、引っ越し費用など。住み替えるたびに発生 |
家賃 | 毎月支払うのが基本。多くの場合、固定の金額を支払い続けるが、長く住んでいると値上げされることも |
管理費・共益費 | 共用部の維持管理などにかかる費用の入居者負担分。毎月支払うのが基本で、物件によっては家賃込みの場合も |
更新料 | 普通賃貸借契約の自動更新時(2年に1回が標準)にかかる費用。物件だけでなく地域によっても差がある |
火災保険料 | 火災発生時の物件のオーナーや近隣住民への賠償補償、家財の補償などを目的とした保険。2年更新が標準 |
賃貸の場合、家賃や管理費・共益費を毎月支払う必要があるうえ、住み替えるたびに初期費用が発生します。一方の持ち家は、初期費用こそかかるものの、住宅ローンの完済後は住居費負担を大きく抑えることが可能です。そのため、長期的に考えると、持ち家のほうがコストを抑えやすいといえるでしょう。
ただし、今後近いうちに住み替えの予定があるなど短期居住を想定しているなら、初期費用の負担が小さい賃貸を選ぶほうが得策と考えられます。
持ち家か賃貸か?選択時の5つのポイント
ここまで見てきたように、持ち家・賃貸のどちらが良いかは一概に言えません。両者を選ぶにあたっては、次の5つのポイントにしたがって判断しましょう。
ライフプランで選ぶ
先述のとおり、ライフプランによって持ち家・賃貸のどちらがお得かは異なります。転勤や住み替えの可能性が高く、短期居住を前提とする場合は賃貸、定住を考えている場合は持ち家のほうが適しているでしょう。
具体例として、5年居住と50年居住(30歳〜80歳)の場合において、以下の条件でかかる費用を簡単に比較してみます。
・前提条件
【持ち家(戸建て)】 ・購入費用 :5,000万円 ・頭金 :500万円 ・初期費用 :250万円(購入費用の5%) ・保険料 :年間10万円 ・固定資産税:年間10万円(都市計画税はなし) ・維持費 :15年ごとに200万円 ・借入金額 :4,500万円 ・返済期間 :35年 ・返済方法 :元利均等返済、ボーナス払いなし ・毎月返済額:約14.9万円(全期間固定金利、年2.0%)※ ※参考:住宅保証機構「住宅ローンシミュレーション」を用いて試算 【賃貸】 ・家賃 :月12万円 ・管理費 :月2万円 ・初期費用 :40万円 ・引っ越し代:1回30万円(10年に一度引っ越しの想定) ・更新料 :6万円(2年更新、家賃0.5ヶ月分) ・保険料 :年間1万円 |
・5年居住の場合の比較
費用項目 | 持ち家 | 賃貸 |
頭金 | 500万円 | ― |
初期費用 | 250万円 | 40万円 |
ローン返済/家賃 | 894万円 | 720万円 |
管理費 | ― | 120万円 |
更新料 | ― | 12万円(2回分) |
保険料 | 50万円 | 5万円 |
固定資産税 | 50万円 | ― |
5年間合計 | 1,744万円 | 897万円 |
・50年居住の場合の比較
費用項目 | 持ち家 | 賃貸 |
頭金 | 500万円 | ― |
初期費用 | 250万円 | 40万円 |
ローン返済/家賃 | 6,260万円(35年分) | 7,200万円 |
管理費 | ― | 1,200万円 |
更新料 | ― | 120万円(20回分) |
保険料 | 500万円 | 50万円 |
固定資産税 | 500万円 | ― |
維持費 | 600万円 | ― |
引っ越し代 | ― | 120万円(4回分) |
50年間合計 | 8,610万円 | 8,730万円 |
試算結果からも、短期だと賃貸が明らかにお得で、居住年数が増えるほど持ち家の優位性が高まることが分かります。
また、賃貸の場合、常に売却価値が無く、一方で持ち家の場合は資産として残ることになるため、上記の50年よりは短い期間で持ち家の優位性が高くなります。ただし、不動産によって価値を維持しやすいもの、そうでないものがあるので注意が必要です。
経済状況で選ぶ
自己資金や家計の状況によって、持ち家か賃貸かを選ぶのも一つの方法です。持ち家は初期費用が高く、長期的なローン返済が必要となるため、自己資金や毎月の家計に余裕がある場合に検討すべきでしょう。こうした費用を負担できるなら、持ち家は長期的にお得な選択肢になり得ます。
反対に、自己資金に余裕がないなど初期費用を抑えたい場合や長期的なローン返済が負担になる場合は、賃貸を選んだほうが得策でしょう。
家族構成やライフステージで選ぶ

家族構成やライフステージによっても適切な選択肢は異なります。独身や若い夫婦であれば、ライフスタイルの変化に対応できるよう、柔軟に住み替えできる賃貸を選んだほうが便利でしょう。
一方、子どもがいる家庭では、スペースにゆとりがある持ち家を選ぶのが適しています。また、年金暮らしが基本となるリタイア後の夫婦も、持ち家の安定感が大きな魅力となるでしょう。
将来の資産形成プランを踏まえて選ぶ
住まいを使って資産形成をしたいのであれば、持ち家一択となります。持ち家は資産となるため、将来的に売却して利益を得たり、子どもに相続したりといったことが可能です。しかし、周辺エリアの地価相場の下落や景気の悪化などによって価値が下がるリスクもあるため、市場動向を十分に考慮して購入する必要があります。
一方、賃貸が資産になることはありません。相続する子どもがいない、相続遺産を遺したくないといった方にとっては、むしろ身軽で理想的な選択肢といえるでしょう。
居住エリアや住環境で選ぶ
居住したいエリアや希望する住環境によっても、適切な選択肢は変わってきます。
都市部で利便性の高い暮らしをしたいなら、選択肢の多い賃貸のほうが向いている可能性があります。都心部になると持ち家の供給数が限られているうえ、そもそも地価が高すぎて、標準的な所得水準では手が届かないケースが多いからです。
一方、それほど地価の高くない郊外エリアでは、むしろ持ち家が有力な選択肢になります。都市部に比べて持ち家の購入価格が低く、賃貸よりもコストパフォーマンスが良いと考えられるからです。落ち着いた環境の中、ゆとりある住まいで暮らしたい方にとっては、郊外の持ち家が有力な選択肢となるでしょう。
まとめ
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持ち家と賃貸には、それぞれのメリット・デメリットがあり、一概にどちらが良いとは言い切れません。何よりも大切なのは、自分や家族のライフスタイル、経済状況、将来のライフプランなどに合った選択をすることです。
基本的な考え方は次のとおりです。
・短期で身軽に暮らしたい場合 →「賃貸」が適している
・長期的に安定して暮らしたい場合 →「持ち家」が適している
なお、どちらを選ぶにしても、契約内容や費用の詳細をしっかり確認することが重要です。自分や家族に合った住まいを選んで、快適で満足度の高い暮らしを叶えましょう!

■監修_サーラ不動産/担当者_資格:宅地建物取引士

WRITER PROFILE

藤田一太郎
宅地建物取引士・再開発プランナー
大手不動産デベロッパーで都心商業施設の運営管理・企画・リーシングなどを経験。再開発コンサルでリーシング・契約業務、都心や地方の再開発企画業務に携わる。現在は、不動産ライターとして活動する一方、日本茶インストラクターとして茶農家メンバーとしても活動中。