リフォームで知っておきたい手すりの役割と重要性

リフォームで知っておきたい手すりの役割と重要性

老後の生活の準備をお考えの方、ご家族に高齢者がいる世帯の方、ご自分の生活や家族の介護には手すりが重要です。命の危険にもかかわる不慮な家庭内事故を防ぐためにも、安全な構造や機能がついた手すりが存在します。

今回は手すりの役割や重要性を踏まえつつ、後付けのリフォーム工事で設置が推奨される場所や効果などを紹介します。

お得な制度も活用し、安心して暮らせる環境を整備しましょう。

手すりの役割とは

手すりには日々の生活を支えたり、深刻な怪我につながりかねない転倒・転落などの事故を防ぐ役割があります。

寄り添う家族

移動の補助自立や家族の暮らしを支える

人は加齢とともに筋力や関節の機能が低下するため、高齢者の多くは両足を使った素早い歩行が困難になります。介助を必要とする状況になっても、手すりにつかまることで、本人の自立や一緒に生活するご家族の暮らしを支援する役割があります。

動作の補助体への負担を軽減する

足腰が弱まっている高齢者は、椅子やベッドから起き上がったり、階段を上り下りしたりといった動作は大きな負担を伴います。こんな時に手すりにつかまって体を支えることで、体にかかる負担が軽くなります。

転倒・転落の防止家庭内の不慮な事故を防ぐ

高齢者は視力・筋力の衰え、運動神経の低下により、ちょっとした気の緩みで体のバランスを崩すことになります。衝撃の強さや打ちどころによっては骨折をしたり、後遺症が残ったり、あるいは命の危険にまで及ぶ恐れがあります。手すりは、そのような事故を防ぐ役割を果たします。

厚生労働省の人口動態統計(平成21年)によると、家庭内事故死亡者数は年間で約1万2000人に上り、交通事故死者数(約7200人)よりも多いです。その中でも転倒・転落の件数は全体の約20%を占めます。

東京消防庁の統計でも、家庭内で発生した救急事故のため救急車を呼んだ人のうち、全体の約45%が転倒で、約10%が転落となっており、65歳以上の高齢者に限れば、約7割の原因が転倒となっています。

発生場所は家の中の居室が約7割、ほかに階段、廊下、庭などです。

厚生労働省の人口動態統計、家庭内における主な不慮の事故の種類別にみた年齢別死亡数・構成割合

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suii09/deth18.html

手すりを設置する際の注意点

手すりのタイプや設置する位置も重要です。暮らす人の身体的特徴や生活スタイル、用途などを踏まえ、選択する必要があります。

特に足を踏み外しやすく、手すりの必要性がもっとも高い階段では、じっくりと考慮した上で設置しましょう。

使う人に合った高さに設置する

手すりの形状には丸型、平型、グリップ型などがあります。

丸型は一般的に利用されており、手を滑らせるように歩けるため移動がスムーズです。握力が弱い人も、握りやすい細めの手すりにすることで安定感がアップします。

平形は握ることもできますし、握らずにもたれながら歩くこともできます。リウマチなどの症状や身体機能の制限があることで握ることが難しい場合でも、手や肘を乗せて移動できる平型であれば安心です。

グリップ型は握力が低下している高齢者にオススメです。「ディンプル」というデコボコの形状に加工されており、滑らずにしっかり握ることができます。

しっかりと握れる太さを選ぶ

利用される人の手の大きさに合わせた太さを選びましょう。

一般的には「直径32~35mm程度の太さ」と言われ、手のひら全体でしっかりと握れるような太さが最適です。

途切れないように設置する

設置する際に、階段の途中で手すりが途切れないように注意しましょう。

途中で支えがなくなると、バランスを崩して転倒・転落の危険があります。

特に踊り場のある階段では、その空間にも手すりがあれば体の方向転換がしやすくなります。

リフォームでおススメの設置場所

階段のほかにも、リフォームによって手すりの後付けをおススメする場所を紹介します。

生活リズムに沿って、便利で快適なお住まいを実現しましょう。

玄関で手摺を持つおばあちゃん

玄関介助向けにはL字型タイプ

玄関ではかがむ、立ち上がる、座るなどの、体の上下運動を行うことが多い場所です。上がり框(かまち)などの段差もあり、手すりは転倒を防ぐ意味でも重要です。

立ち上がりや座る動作に楽なのが、地面と垂直に設置される縦手すりタイプです。腕を立てたま掴めるので力が入りやすく、楽です。

また、足腰の弱い高齢者を介護されている方には、L字型タイプもおススメです。上下運動だけでなく、土間からドア、廊下までの移動をはじめとした、横の運動をサポートできるメリットがあります。

廊下~出入口付近にもあると便利

横の移動を伴う廊下では、主に水平手すりは使われます。

また、出入り口付近には、ドアの開閉や段差を乗り越える際に姿勢の安定を助ける縦手すりタイプも便利です。

ちなみに、玄関や廊下に手すりを設置すると、買い物袋や荷物などをかけておいたり、帰ってきたお子様の手が汚れていた場合、手すりを使うことで壁紙を清潔に保てるといったメリットもあります。

浴室~水平タイプはタオルだけにも

立ち座りの上下運動をする浴室でも手すりは必須です。洗い場の座る位置から手の届く場所に縦手すりタイプが最適でしょう。浴槽内へ足をまたぐ際にも便利です。また、水平タイプも設置すれば浴室内で移動も楽になるだけでなく、タオルがけ代わりにもなります。

浴槽の側部壁面にL型あるいは水平手すりを設置すれば、立ち座りや浴槽内での姿勢の保持にも役立ちます。

出入口に段差がある場合は、脱衣所側にも手すりを付けておくと安心です。

トイレ床と壁の2タイプ

トイレの手摺

トイレでは浴室と同様、立ち座りの上下運動をする場所です。手すりがあることで体への負担を減らし、転倒事故を防ぎます。

トイレでは床に固定するタイプと、壁に固定するタイプの2種類があります。

床に固定するタイプは、便器に腰掛ける際や立ち上がるときに便利です。システムタイプとはね上げ式のタイプに分かれ、ご家族が頻繁に利用する場合には、使わないときにしまっておける、はね上げ式タイプが効率的です。

壁に固定するタイプは、便器への移動に便利です。水平移動がしやすいI字型、昇降が楽になるL字型、握りやすい波動型、使わないときに折りたためる可動型もあります。

最後に

紹介してきたように、手すりは老後の生活や、大切なご家族の介助をサポートします。

設置リフォームには費用がかかりますが、介護保険を利用することで自己負担額の1~3割負担で取り付けられます。介護保険適用の条件は、要介護1・2、要介護1~5の認定を受けている方が対象となります。

介護用品は、介護保険で購入・レンタルができます。

改修は、床・壁に固定するもので、介護用品は固定せず取り外しが容易なものです。(例:床に置くだけのシステムタイプの手すり)

手すりは介護だけでなく、誰もが生活しやすくなる道具です。最近はユニバーサルデザインとして手すりを各所に取り付けることも多くなってきています。

本コラムでは今後、介護保険に関する情報も紹介していきますので、ご参考にしてください。

■監修_リビングサーラ/施工管理担当者_資格:1級建築施工管理技士・2級建築士
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WRITER PROFILE

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由本 裕貴

1983年3月20日、愛知県豊川市生まれ。
御津高校、愛知大学を経て、2005年に日刊スポーツ新聞社入社。プロ野球やサッカー日本代表を担当し、2014年に東愛知新聞社へ転職。2021年からフリーに転向し、翌年から東日新聞ライターとして東三河のニュースや話題を追っている他、スポーツマガジンやオカルト雑誌などでも執筆。豊川商工会議所発行「メセナ」の校正も請け負う。著書に「実は殺ってないんです 豊川市幼児殺害事件」「東三河と戦争 語り継ぐ歴史の痕跡」「訪れたい 東三河の駅」がある。
家族は妻と長男。趣味はスポーツ観戦、都市伝説の探求。

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