卒FIT対策として余剰電力を蓄えて使うメリット
ご家庭や事業所で、固定価格買取制度(FIT制度)による買取期間が満了した太陽光発電設備を示す「卒FIT」。施設の設置から、買取価格が固定で保障されていた10年が経過して卒FITを迎えると、売電価格が大幅に下がってしまいます。
いくら投資回収ができていても、それまで当たり前に得られた売電収入が激減することは、物価が高騰する昨今、家計の悩みのタネとなります。
今後はそれぞれのご家庭で、電力会社と新たに買取契約を結ぶ時代。
住宅ローンを返済し、お子様の教育費や老後の資金を蓄えながら、環境変化によるエネルギーコストを抑制し、安心で安全な住まいを一緒に考えていきましょう。
目次
卒FITへの対策
売電収益が6分の1に激減
卒FITにより、売電収益がどれだけ下がるか見ていきましょう。
2012年度に太陽光発電システムを設置した場合、FIT期間中は1キロワットあたり42円だった売電単価が、期間終了後は7円に下落。年間発電量が3,700キロワットアワーの場合に、年間にして129,500円、10年間では129万円も収入が下がってしまい、売電するメリットが少なくなります。
マイホームは築10年が経過したあたりで、住宅ローンは残り25年。住宅ローン控除はすでに終了し、お子様は高校や大学に進学するようなタイミングの方も多いでしょう。このタイミングでの売電収入の激減は、家計へのかなり大きなダメージとなります。
今後も電気代が上がる恐れ
また、夜間や曇天時など太陽光発電が発電しない時間の買電価格についても、大手電力会社が軒並み最終大幅赤字を計上したり、政府が電気料金の値上げ幅の圧縮を指示した背景などから、高止まりが続いています。
電気自動車の普及や生活用品のIoT化でますます電気の需要が増える一方で、消費増税、原発処理費の負担、原油価格の高騰などにより、今後も電気代は上がり続けていくとみられ、リスクへの対策が必要となります。
余剰電力の活用方法
売らずに蓄えて使おう!太陽光発電の余剰電力を蓄えるメリット
買電価格の高騰により、太陽光発電の余剰電力を売らずに、自家消費することのメリットが増しています。
卒FITを迎え、中部電力との契約を続けると1キロワットあたり7円の売電単価に下がってしまいます。そのまま安く売るのではなく、V2Hと電気自動車の組合せや蓄電池による蓄電設備を活用して、高くなっていく電気料金の支払いに充てた場合にメリットが大きくなります。
例えば、サーラ余剰買取の直近1年間平均値である年間売電量3,700キロワットの場合、売った場合は年間25,900円(3,700×7円)の収入にとどまりますが、使った場合は年間138,972円(3,700×37.56円)の節約となります。実に、5倍以上の差があります。※2023年4月時点の電気料金に基づいて試算しています
災害時に頼もしい存在~V2Hと蓄電池の特長~
V2H(Vehicle to Home)とは電気自動車を充電するだけでなく、電気自動車に貯めた電気をご家庭で使用でき、電気の自給自足を実現するシステムです。
電気自動車の蓄電量は8~90キロワットと大容量。災害などの停電時にも、いつもお使いのコンセントや200V電源向けの機器が使用できて、普段と変わらない生活ができるため安心です。また、太陽光発電で蓄えたクリーンな電気を電気自動車に充電し、ガソリンスタンドに行かずにご家庭で車に充電できることも大きなメリットです。
ただ、電気自動車への車の買い替えが必要で、車が止まっていないと充放電できないデメリットがあります。
一方の蓄電池は、蓄電量は最大10キロワット程度とV2Hに比べれば少ないですが、選べる種類も多く、車は不要で単独使用ができるメリットがあります。
蓄電池と併用で「貯める」選択肢
太陽光発電システムでは、電気をつくる→電気を変換する→電気を振り分ける→電気を使うという4段階のステップで電気を利用しますが、これに蓄電池を併用することで、電気を使う前に「電気を貯める」という選択肢を加えることができます。
ただ、蓄電池との併用には非常時の電源として活用できる、光熱費の削減につながるといったメリットがある一方で、導入・維持にかかるコストが高いというデメリットもあります。家庭用蓄電池のリチウムイオン蓄電池は、「定置用蓄電システム普及拡大検討会」(経済産業省)によると、2019年度の工事費を含む蓄電システムの平均価格は、蓄電容量1キロワットあたり18・7万円とされており、ある程度まとまった資金が必要になります。
知っておきたい蓄電情報
蓄電容量によって使用できる家電の種類や数、時間は異なってきます。
ご家庭の生活スタイルに合わせて、必要とされる電気容量を把握することが大切です。
蓄電量÷消費電力で、利用できる時間が割り出せます。
例えばLED照明や冷蔵庫、テレビや携帯電話の充電器などで合計1キロワットを消費する場合、蓄電池の容量が10キロワットだと、10キロワット÷1キロワットで10時間の利用が可能です。
ちなみに電気自動車への充電は3~6キロワットのため、将来電気自動車が普及すれば容量が不足してしまいます。
家電の中でも、炊飯器や電子ポット、ホットプレートは単体で1キロワット前後を必要とし、消費電力が大きいです。
また、200V機器であるエアコンやIHコンロ、電気給湯器を使用する場合はV2Hや全負荷型タイプの蓄電池を選択する必要があります。
環境変化に合わせた設備の選び方
身近になってきたEV車~大容量バッテリーがある生活のメリット~
地球温暖化対策もあり、欧州を中心に世界各国でガソリン車やディーゼル車、プラグインハイブリッド車を規制する動きが広まっています。世界の大手自動車メーカーが電気自動車へシフトする中で、日本でもトヨタが2050年にガソリン車をゼロに、日産自動車もEVを中心としたゼロエミッション車の普及を目指すなどの動きが出てきています。
また、日産自動車と三菱自動車は2022年5月、軽自動車のEV「サクラ」と「ekクロスEV」を発表。サクラ(Sグレード)の本体価格は約250万円で、国や地方自治体の補助金も受けられます。
お手頃で手に入り、街乗り向けの走行距離の短い軽EV車の登場で、蓄電先としてのEV車が普及してきているのです。
停電はすぐに復旧しない~災害対策に(レジリエンス)~
東海地方では2018年の台風接近で、一部地域で最大7日間の停電が発生しました。停電後、すぐに復旧する概念が崩れ、太陽光発電や蓄電池のニーズが高まっています。
風雨災害はもちろん、南海トラフ地震もいつ起きても不思議ではない中で、緊急時に電気を使用できる環境が求められています。
トライブリッド式で電力ロスを抑制~生活スタイルやライフプランの変化~
「住宅ローンが残っているから投資は控えたい」「子どもの教育費や老後の貯蓄を考えると投資はできない」「EV車を買いたくても、夫婦共働きで日中に駐車している車がない」といった声がよく聞かれます。
しかし、太陽光発電が設置されている皆さんだからこそ、毎月のエネルギー支出が膨らむリスクを回避することができます。物価が高騰するなかでもライフプラン通りの収支を継続できるように、太陽光発電の余剰電力を上手に利用したいものです。
また、太陽光発電、V2H、蓄電池に必要なパワーコンディショナを1台に集約することで、3つの機器が生活リズムや電気の使用状況に合わせて連携するトライブリッド蓄電システムもあります。現在は複数社が販売しているこのシステムなら、直流から交流への変換による電力のロスを最小限に抑えることができます。
将来的に複数のパワーコンディショナや大容量バッテリーを持つ場合、返還による電力ロスや維持管理費を抑える工夫が必要になってきます。
最大180万円の助成~補助金を活用する~
蓄電池を導入したい方には、お得な補助金制度がお勧めです。
「こどもエコすまい支援事業」なら、1戸あたりに64,000円の補助が出ます。
また、電気自動車やV2H向けの補助金もあります。
新車の日産リーフe+であれば最大85万円が、V2Hなら最大75万円(設備費の半額)と工事費として最大40万円が交付されます。
新車とV2Hを同時に購入される場合、合わせて最大180万円の補助が受けられるのです。
最近は半導体不足やエネルギー価格の高騰で、蓄電設備への注文の集中と生産の不安定化が重なり、納期の遅れや新規受注の停止も起きています。それにより、一部の設備では大幅な価格の値上がりも起きていますので、ぜひ補助金をご活用ください。
最後に…
国際情勢に伴うエネルギー環境の変化とともに、今後は地域の皆様の住まい方やライフスタイルが大きく変化していくことが予想されます。
サーラは住まいやエネルギーの提案企業としてお客様に寄り添い、最適な住まい方、安心・安全で快適な暮らし方をご提供することで、カーボンニュートラル社会の実現に貢献していきたいと考えております。
卒FITを迎えた方、これから迎える方、太陽光発電や蓄電設備に関心のある方は、サーラエナジーにお気軽にご相談ください。
■監修_サーラエナジー/エネルギー事業、暮らし事業担当者
WRITER PROFILE
由本 裕貴
1983年3月20日、愛知県豊川市生まれ。
御津高校、愛知大学を経て、2005年に日刊スポーツ新聞社入社。プロ野球やサッカー日本代表を担当し、2014年に東愛知新聞社へ転職。2021年からフリーに転向し、翌年から東日新聞ライターとして東三河のニュースや話題を追っている他、スポーツマガジンやオカルト雑誌などでも執筆。豊川商工会議所発行「メセナ」の校正も請け負う。著書に「実は殺ってないんです 豊川市幼児殺害事件」「東三河と戦争 語り継ぐ歴史の痕跡」「訪れたい 東三河の駅」がある。
家族は妻と長男。趣味はスポーツ観戦、都市伝説の探求。