火災保険の詐欺が増加中!不正請求の事例や注意点について解説

火災保険の詐欺が増加中!不正請求の事例や注意点について解説

火災保険詐欺とは、保険会社に保険金の支払義務がないにもかかわらず、保険金の支払請求をする、いわゆる「不正請求」のことをいいます。

近年、業者から「火災保険を使って無料で修理できる」と言われ、虚偽の保険金請求をもちかけられる事例が増加しています。

「虚偽の保険金請求をするとどうなるの?」

「火災保険詐欺に巻き込まれないためには?」

と、疑問に思う人も多いかもしれません。

本記事では、火災保険詐欺の事例や注意点について詳しく解説していきます。

火災保険詐欺とは?

家を狙う男

前述したように、火災保険詐欺とは「不正請求」のことをいいます。近年、「火災保険を使って実質的に無料で修理ができる」などと業者から説明され、火災保険の不正請求をさせる悪質な詐欺が多発しています。

悪質業者からの電話や訪問などに応じて契約を結ぶと、いつの間にか詐欺に巻き込まれている…なんてこともあります。ここでは、火災保険の不正請求について詳しく説明していきます。

参考:「火災保険を使って実質的に無料で修理ができる」などとうたい、火災保険金を利用した修理工事契約を締結させる事業者に関する注意喚起 | 消費者庁

火災保険の不正請求のこと

火災保険の不正請求とは、保険会社に保険金の支払義務がないにもかかわらず、保険金の支払請求をすることをいいます。

たとえば、自然災害がおきていないにもかかわらず、自然災害によって住宅の一部が壊れたと虚偽の申告をして火災保険の保険金を請求することなどがあげられます。

火災保険では、火災以外にも落雷や洪水など補償される範囲が明確に決められています。故意による故障や補償範囲以外の損害を、あたかも補償範囲内による損害であるとみせかけて請求した場合、火災保険の「不正請求」となります。

不正請求と水増し請求の違い

不正請求と似たものに、「水増し請求」があります。

水増し請求とは、実際の損害額よりも多い金額を保険会社に請求することをいいます。たとえば、自然災害によって住宅に損害があったとき、住宅の損害額を実際よりも高く見積もって保険金を請求することなどがあげられます。つまり、不正請求は虚偽の申告であるのに対し、水増し請求は保険金を上乗せして請求することを指します。

火災保険は、あらかじめ定めた保険金額を上限に実際の損害額が保険金として支払われる「実損てん補」が基本となっています。水増し請求は不正請求よりも悪質ではないと思われがちですが、水増し請求も詐欺のひとつであるため、注意が必要です。

不正請求をするとどうなるのか

火災保険の不正請求が発覚すると、保険会社からペナルティを受けるだけでなく、法的責任や社会的信用の問題に発展します。

保険会社からのペナルティとしては、「保険契約を解除される」「支払われた保険金の返金を求められる」などがあります。場合によっては保険会社から訴えられる可能性もあります。

火災保険の不正請求や水増し請求は、刑法第246条に規定されている「詐欺罪」に該当する犯罪行為です。不正請求や水増し請求をすると、逮捕され、有罪となる可能性があります。有罪となった場合、10年以下の懲役刑を受けることとなります。

文献:刑法 | e-Gov 法令検索

火災保険詐欺の4つの事例

業者とお客さん

前述したように、故意に不正請求をするだけでなく「いつの間にか火災保険詐欺に巻き込まれている…」といったケースも増えてきています。

では、実際の火災保険詐欺の事例にはどんなものがあるのでしょうか。4つ紹介していきます。

経年劣化による故障を自然災害による損害と偽るケース

自然災害がおきた際、経年劣化した部分も自然災害による損害と申請しよう」といった行為は、詐欺に該当します。

火災保険では、経年劣化による故障は補償の対象外となっています。経年劣化とは、雨風・湿気・温度変化・日照などによって品質が低下することや、通常の方法で使い続けることによる摩滅、汚れなどを指します。

具体例としては、壁紙や畳、フローリングの色あせなどがあります。これらは通常の方法で使い続けた結果によって引き起こされたものであるため、経年劣化による損害といえます。

災害が原因による損害と経年劣化の修理を併せて行うことは可能ですが、修理費用については災害が原因による損害のみ保険金が支払われるということを理解しておく必要があります。

故意による故障を自然災害による損害と偽るケース

経年劣化のほかにも、「わざと壊した」といったような故意による故障を自然災害による損害と偽る行為も、詐欺に該当します。

火災保険は、基本的に「偶然の事故や災害によって発生した損害」を補償するものです。「故意」とは、「結果が発生することを認識していながら、あえてその行為をすること」を指します。そのため、偶然の事故や災害ではなくわざと壊した場合は火災保険の対象とはなりません。

保険金申請サポート業者とのトラブル

最初は自ら不正請求をするつもりがなくても、保険金申請サポート業者に依頼することよって火災保険詐欺に加担するケースもあります。

保険金申請サポート業者とは、保険金の請求を行う際に書類の取り寄せや申請の手続きをサポートしてくれる業者のことをいいます。火災保険金の請求は、契約者本人しかできません。そのため、火災保険の申請サポート業者は、保険金を請求する際の書類の書き方の説明といったような、手続きのサポートのみを行います。

近年、保険金申請サポート業者とのトラブルが増加傾向にあります。「経年劣化の故障も火災保険で直せる」「自己負担ゼロで修理できる」「みんなやっているから大丈夫」といったようなセールストークに騙されて知らないうちに不正請求をしている、というケースが増えています。

火災保険の請求方法は、決して難しくありません。うっかり詐欺に加担しないために、保険金申請サポート業者の勧誘には注意しましょう。

無料点検で家の一部を故意に壊されるケース

保険金申請サポート業者以外にも、「自宅の無料点検をしている」「屋根や雨どいの修理ができる」といって突然自宅に業者が訪問するケースもあります。

点検の際に屋根をわざと壊し、「屋根の一部が壊れていたので修理が必要です」「火災保険が適用されるので申請しましょう」といって火災保険申請の流れにもっていきます。

屋根の修理工事契約を締結後、火災保険の申請を行いますが、「偶然の事故や災害によって発生した損害」ではないため、火災保険がおりることはありませんでした。

業者の言葉を鵜呑みにした結果、知らないうちに火災保険の不正請求をしてしまうことになるのです。

火災保険詐欺に巻き込まれないための注意点

家と申込書

不正請求や水増し請求などの火災保険詐欺に加担しないためには、火災保険の内容を理解し、不審な業者に関わらないことが重要です。ここでは、火災保険詐欺に巻き込まれないための注意点について詳しく説明していきます。

火災保険の内容を理解する

火災保険詐欺に巻き込まれないために、まずは火災保険の内容をしっかりと理解しておくことが大切です。

「加入している火災保険の補償内容をよく知らない」「どんなときに保険が下りるのかよくわかっていない」という人も多いのではないでしょうか。

火災保険の補償範囲は、保険会社や契約内容によって異なります。火災保険で補償されるものは火災だけでなく、落雷や風災、水災、盗難などさまざまな損害が対象となります。その中から必要な補償を選択して保険に加入します。

また、火災保険には免責金額が設定されています。免責金額とは、損害をうけたときに自己負担する金額のことをいいます。つまり、損害額から免責金額を差し引いた金額が保険金として支払われることになります。免責金額以下の損害の場合は保険金がおりないため、日頃から火災保険の契約内容をよく理解しておくことをおすすめします。

訪問業者による無料点検に注意する

前述したように、「自宅の無料点検をしている」といって突然自宅に業者が訪問してくるケースがあります。

「近所で屋根の補修工事をしているので無料点検に来た」となどといって訪問し、「保険金が支払われるので自己負担がない」とうたってその場で工事契約を締結させようとします。

火災保険は、経年劣化や故意による故障について補償の対象とはなりません。「無料」や「保険金を使って自己負担ゼロで修理できる」といった言葉に騙されず、少しでも不審に思ったら家族や保険会社などに相談しましょう。

保険金申請サポート業者に注意する

保険金の請求を行う際に書類の取り寄せや申請の手続きをサポートしてくれる、保険金申請サポート業者にも注意が必要です。

保険金申請サポート業者に支払う報酬は、保険金の30%から40%にものぼるといわれています。保険金申請サポート業者の中には、さらに高額な報酬を請求したり、不正請求をすすめたりする悪質な業者もあります。保険金申請サポート業者に依頼することで、トラブルに巻き込まれるリスクが高くなります。

保険金の請求は難しいと思われがちですが、手順どおりに行えば決して難しいものではありません。

また、分からないことは保険会社や保険代理店に相談すれば、親切に教えてくれます。

詐欺に巻き込まれそうになったときの対処法

悩む女性

「火災保険詐欺に巻き込まれたかも…」「なんだか怪しい」と思ったときは、どうしたらいいのでしょうか。

火災保険詐欺に巻き込まれそうになったときは、一人で抱え込むのではなく、次のように対処しましょう。

保険会社に相談する

工事業者や保険金申請サポート業者とのやりとりに不安を感じたら、まずは契約している保険会社の窓口や保険代理店に相談しましょう。

保険会社では同様のトラブル・相談を受けていることが多く、丁寧に対処法を教えてもらえるでしょう。相談する際はどんな部分に不安を感じているのか、状況を詳しく説明できるようにしておきましょう。

また、工事業者や保険金申請サポート業者と契約を交わしてしまっていても、クーリング・オフの適用期間内であれば契約そのものを解除できます。

参考:クーリング・オフ(テーマ別特集)_国民生活センター

消費者庁や日本損害保険協会の相談窓口に連絡する

保険会社の窓口のほかにも、いくつか相談先があります。代表的なものとして、消費者庁の「消費者ホットライン」(188)や、日本損害保険協会の相談ダイヤルなどがあります。

【消費者ホットライン(188)|消費者庁】

消費生活の中でトラブルや困ったことについて相談したいときに利用できるホットラインです。相談は無料ですが、ナビダイヤルの通話料がかかります。

【保険金に関する災害便乗商法 相談ダイヤル(0120-309-444)|日本損害保険協会

「保険金申請サポート業者から勧誘を受けた」「保険金申請サポート業者との契約を解除したい」といった相談をすることができます。

その他、日本損害保険協会では、損害保険に関する相談や保険金不正請求の情報提供なども受け付けています。

まとめ

本記事では、火災保険詐欺の事例や注意点、詐欺に巻き込まれそうになったときの対処法について解説しました。

火災保険詐欺とは、「不正請求」のことをいいます。火災保険の不正請求には、経年劣化や故意による破損を自然災害と偽るケース、水増し請求、悪質な業者との契約などさまざまなケースがあります。最初は自ら不正請求をするつもりがなくても、ウソのだまし文句で知らないうちに不正請求をしている、というケースも増えてきています。

火災保険の不正請求は、「詐欺罪」に該当する犯罪行為です。加入している火災保険の内容をよく理解し、不審な保険金申請サポート業者や工事業者には注意しましょう。

また、火災保険詐欺に巻き込まれそうになったら、安心できる保険会社に相談することも大切です。「怪しい業者から勧誘を受けた」「この破損、本当に火災保険が使えるの?」といった不安や疑問をお持ちの方は、サーラフィナンシャルサービスへお気軽にお問い合わせください。

■監修_サーラフィナンシャルサービス/担当者_資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士

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WRITER PROFILE

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三浦美優

CFP®認定者。
保険や金融商品を販売しない独立系ファイナンシャルプランナーとして活動中。
ライティング、セミナー、個別相談などお金にまつわる幅広いサービスを提供しています。

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