バリアフリーの例を場所別に紹介!費用・補助金まで解説

バリアフリーの例を場所別に紹介!費用・補助金まで解説

高齢化社会の現代、老後のことをその時になってから考えて行動するのでは遅く、今から備えておく必要があります。ご自分やご家族が長く生活していく中で、暮らしやすい家づくりを考えた時、「バリアフリー住宅」はとても重要であり、導入をお勧めします。

今回は段差の解消やスロープなど、住まいの中でできるバリアフリーの解説や、リフォームをする際のお勧めの場所や効果を詳しく説明します。「バリアフリー化を考えているけど、我が家にはどんなリフォームが必要なのか分からない」「将来的にどんなリフォームをすれば生活しやすいのか知りたい」といったことでお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

バリアフリーの例は、浴室の手すりや玄関のスロープなど自宅で実行できる小さな改修から、間取りの再設計まで段階的に幅広く存在します。本記事では、4つのバリアという基礎概念をおさえたうえで、浴室・トイレ・玄関・廊下・キッチン・リビングの場所別事例と、介護保険の住宅改修制度をはじめとする補助制度、リフォーム費用の目安までを順に整理します。

この記事でわかること

  • バリアフリーと4つのバリアの基礎概念
  • 自宅の場所別バリアフリー事例
  • バリアフリーリフォームに使える補助制度の概要
  • バリアフリーリフォームの費用相場の目安

バリアフリーとは生活上の障壁を取り除く考え方

バリアフリー住宅とは、障害者や高齢者の方が生活を送る上で支障となる障害物(バリア)を取り除き、生活しやすいような設備やシステムを備えた住宅のことを指します。健常者にとって安全であっても、障害者や高齢者には同じであるとは限りません。

お体が不自由でも、身体機能が衰えても、安心して、怪我をすることなく安全に暮らすことができ、また介助者が介護をしやすい環境を備えた住まいがバリアフリー住宅です。

また、バリアフリー住宅は物理的障壁の除去を指すことが多いですが、バリアフリーは障害者の社会参加を困難にしている社会的、制度的、心理的なすべての障壁の除去という意味でも用いられます。

観点要点
対象高齢者・障害のある方を中心に、誰もが暮らしやすい状態
4つのバリア物理・制度・文化情報・意識の4種類が存在
関連概念ユニバーサルデザインは出発点と対象範囲が異なる

物理・制度・文化情報・意識の4つのバリアに分かれる

バリアフリーで取り除く障壁は、物理的・制度的・文化情報面・意識上の4種類に整理されます。段差や狭い通路といった物理面だけでなく、申請手続きや情報提供、周囲の無理解までもがバリアに含まれます。住宅における事例は物理的バリアの除去が中心となりますが、家族や介助者の意識まで含めて整えることで、結果として住まいの使いやすさにつながります。

ユニバーサルデザインとは出発点が違う

近年、「ユニバーサルデザイン」という言葉をよく耳にすることがあると思います。総務省によると、バリアフリーが障害や高齢化によってもたらされる障壁に対処するという考え方であるのに対して、ユニバーサルデザインは、あらかじめ障害の有無、年齢、性別、人種等にかかわらず、すべての人々が利用しやすいように都市や施設、製品や生活環境をデザインする考え方を意味します(例:トイレなどの分かり易いピクトサイン等 )。

両者はよく混同されますが、発案された背景は大きく異なります。ユニバーサルデザインは、障害者だったロナルド・メイス氏が、バリアフリーに対応した設備の「障害者だけの特別扱い」に嫌気がさし、最初から幅広い人たちに使いやすいものを作る設計手法として発明されました。

高まるバリアフリー住宅の需要

バリアフリー住宅

近年、家庭内での不慮の事故は多発しており、死亡者数も増えています。厚生労働省の人口動態調査における高齢者の「不慮の事故」による死亡者数は、2010年に3万人を超えて以降、毎年3万人以上となっています。

この中で、交通事故や自然災害による死亡者を除いた数は、2016年が2万7207人で、交通事故(3061人)や自然災害(1424人)をはるかに上回っています。死亡者数に占める高齢者の割合も、2010年以降は8割以上となっています。

事故の種別ごとに高齢者の救急搬送者数を見ても、転倒・転落による通報が最も多く、全体の8割を占めています。こういった事故を未然に防ぐため、事故が発生する場として多い浴槽や浴室、廊下や玄関に手すりを取り付ける、床を滑りにくくする、段差をなくすといった対応が必要になってきており、バリアフリー住宅の需要が高まっているのです。

バリアフリーの例を場所別に整理する

バリアフリー住宅へ変える上で、どんなリフォームの方法があり、どんな効果が見込めて、どんな事故を防げるのでしょうか。家庭内の場所ごとに具体例を紹介します。

場所主な事例
浴室手すり設置・滑りにくい床・段差解消
トイレ寝室近くに配置・外鍵対応・手すり設置
玄関段差解消・スロープ設置・手すり設置
廊下手すり設置・90センチ以上の幅確保
キッチン昇降式調理台・座って使えるシンク
リビング段差なしの床・広い動線・低めの家具

浴室は手すりと滑りにくい床で転倒を防ぐ

浴室で多い転倒事故を防ぐため、壁や浴槽内に手すりを設置すると効果的です。背の高さや体の向きに合わせた適切な場所に設置することで安全性が向上します。

浴室の床は水や泡で濡れ、滑りやすい状態です。転倒を防ぐため、床やバスタブに滑りにくい材質や水はけの良いタイプを採用しましょう。介助者も安心してサポートできます。

浴室の出入り口に段差があると、またぐ際に転倒事故が起こる可能性があります。段差をなくしてフラットにする事で事故を防止しましょう。

トイレは寝室との距離と外開きもしくは引き戸が安心につながる

トイレ

トイレが寝室から遠いと、移動中の転倒事故や、寒い時期にはヒートショックの心配も高まります。また、夜中にトイレに向かうのが面倒になり、我慢することで健康を害することにもつながりかねません。

もし要介護者がトイレの中で倒れてしまった場合、施錠されていると救助が難航することになります。外から鍵を開けられるようにリフォームをしておけば、緊急時にも安心です。

トイレは履いているズボンを下ろしたり、便座に腰をかける動作で転倒の危険性があります。浴室と同様、適切な位置に手すりを設置しましょう。

出入り口の有効幅は、将来車椅子で使うことを見据えて80センチ以上を確保しておくと、介助時の動作にも対応しやすくなります。

玄関は段差解消とスロープで出入りを楽にする

ほとんどの住まいに存在するのが、玄関と廊下を隔てる段差です。これを解消することで、転倒を防ぎ、車いすの出入りが楽になり、介助者の負担も減ります。杖を付いて移動する方にとっても段差のない玄関は安心です。

スロープを設置する事で段差がなくなり、転倒の危険性が減ります。雨天時には濡れた靴で地面が濡れ、斜面の部分では滑りやすいので、スロープの素材にも気を配りましょう。

一般的な戸建ての上がり框は20センチから30センチほどの高さがあり、車椅子や杖利用者にとって大きな障壁になります。靴の脱ぎ履き用に腰掛けスペースと手すりを組み合わせると、立ち座りの負担も軽減できます。

廊下は手すりと十分な幅で介助に対応する

車いすが通るには、最低でも75センチ以上の有効幅が必要です。進んだり、戻ったりするだけでなく、進行方向を変えるという動作も考慮した広さでつくる場合、直径で150センチは必要となります。

玄関や廊下の壁に手すりを付けることで、転倒を防ぎます。設置する際には、使用者の身長や歩行の状態を考慮して高さを考慮し設置します。

廊下が長い間取りでは、複数箇所に手すりを連結し、必要に応じて休憩用の腰掛けスペースを設けておくと、移動の途中で疲れにくくなります。

キッチンは昇降式と座って使える設計が役立つ

昇降式のキッチンにしておけば、誰でも安全に使用できます。高さ調節が可能なキッチンはシンクの下が十分な広さになっていますので、車いすに座ったままでも使用する事が出来ます。

床はすべりにくい素材を選び、調理中の動線上に段差を残さない設計にすると、長く安全に使い続けやすい台所になります。また、キッチンの動線上のスペースは車いすの移動を考慮する必要があります。

リビングは段差なしの床と広い動線が要

車いすでも入りやすいように、出入り口も部屋全体も広くつくると効果的です。家具でも、車いすで使用しやすい高さに調節できるテーブルが便利です。小さな段差でも転倒事故は起きますので、フラットで滑りにくい床にすることをお勧めします。

畳コーナーとフローリングの境目に段差を残さない、ラグやコード類でつまずきを誘発しないなど、日常導線の安全確保が重要です。家族が集まる時間が長い部屋であるほど、動線の整理が事故予防に直結します。

扉と照明の工夫で開閉と操作を楽にする

扉の工夫

押したり引いたりする扉は車いすでの出入りがしにくく、高齢者にとっては扉が重たいケースもあります。引き戸タイプなら開け閉めしやすく、開口幅が広いものを設置すれば車いすでも楽に通れます。また、歩行出来る方の場合は、ドアならハンドル側、引き戸なら引手側に縦手すりがあるとよろけずに、開け閉めできます。

大きめのスイッチや、暗闇でも光って場所を教えてくれるスイッチの照明が便利です。車いすでも押しやすい高さや場所にスイッチを設置することも大切です。

洗面所は車いすで使える高さと十分な空間が鍵

車いすに座ったままでも使いやすい高さに洗面台を設置する事で、介助者の力を借りる事なく一人で使うことができます。車いすのまま洗面台の前まで移動できるように十分な幅の空間と、洗面台下の収納という障害をなくすことも重要です。

バリアフリー住宅の間取りで意識する3つの観点

間取り

リフォームにしても新築にしても、バリアフリー住宅にする際には間取りを留意することも重要です。ポイントを紹介します。

移動しやすい動線を確保する

介助者と要介護者が一緒に移動したり、車いすで移動することを考えると、平面的には広い通路幅と開口幅が求められます。引き戸の採用も推奨します。手すりを適切な場所に設け、適度な明るさの照明を設置する事で、自立して生活できる空間に近づきます。

上下移動をサポートする機器を検討する

2階に要介護者が生活する空間がある場合、エレベーターの設置を検討しましょう。エレベーターのサイズも、車いすに対応できるタイプを選ぶ必要があります。

建物の構造や費用面でエレベーター設置が難しい場合、階段に取り付ける昇降機や、階段の幅を広くするといった、上下移動の際の負担をなるべく減らす工夫が必要です。

廊下はできるだけ短めにする

移動距離をできる限り少なくするため、廊下はなるべく短くしましょう。寝る、食べる、トイレに行くなどの機能が近くにある事で、ストレスなく、快適に過ごすことができます。他の家族との距離も近づくため、要介護者が安心感を得られます。

バリアフリーリフォームで使える補助制度の例

補助制度

バリアフリーリフォームは、介護保険の住宅改修・所得税特別控除・自治体助成といった補助制度を併用することで、自己負担を抑えながら進められます。要介護認定の有無や住宅条件によって使える制度が異なるため、事前確認が重要です。

制度概要
介護保険の住宅改修要支援・要介護認定者を対象に支給限度基準額20万円
所得税特別控除高齢者等居住改修工事で所得税の一部を控除
自治体助成市区町村単位で対象工事や上限額を独自に設定

介護保険の住宅改修は最大20万円が支給対象

介護保険の住宅改修は、要支援・要介護認定を受けた方を対象に、支給限度基準額20万円までの工事費が支給対象となる制度です。自己負担割合に応じて1割から3割を本人が負担し、残りが保険給付として支給されます。対象工事は手すりの取り付け、段差の解消、滑りの防止のための床材変更、引き戸等への扉の取り替え、洋式便器への取り替えなどに限定されます。いずれも、工事請負業者との契約・着工前に、必ず事前に居宅介護支援事業者(ケアマネージャなど)を通じて市町村に申請手続きが必要です。

所得税特別控除と自治体助成も併用できる

介護保険のほかに、所得税のバリアフリー改修促進税制や、自治体独自のリフォーム助成も併用できる場合があります。所得税特別控除は、50歳以上の方や要介護認定者などが居住する住宅で一定のバリアフリー工事を行った場合に、所得税額の一部が控除される仕組みです。自治体助成は市区町村ごとに対象工事と上限額が異なり、介護保険の住宅改修と重複申請可能なケースもあれば、片方しか使えないケースもあります。お住まいの自治体窓口で対象範囲を確認したうえで、申請順序を整理しましょう。

バリアフリーリフォームの費用相場の例

バリアフリーリフォームの費用は、手すり1本数万円の小規模工事から、浴室全体の入れ替え数十万円規模まで幅広く分かれます。一度にすべて改修するのではなく、優先度の高い場所から順に着手する考え方が、費用負担と効果のバランスを取りやすくなります。

工事内容費用相場の目安
手すり設置(1本)1万円台後半から3万円程度
廊下手すり(1メートル)1万円程度から
段差解消(1ヶ所)数万円から十数万円
浴室まるごと改修50万円から100万円程度
トイレリフォーム20万円前後から

手すり設置や段差解消は数万円から始められる

手すりや小規模な段差解消であれば、数万円から十数万円ほどで着手できます。トイレや浴室への手すり1本は工事費込みでおおむね1万円台後半からが目安です。廊下の手すりは下地補強を含めて1メートルあたり1万円程度から、複数箇所をまとめて発注すると割安になる傾向があります。段差解消は箇所と方法によって振れ幅が大きいものの、ミニスロープなど簡易部材を活用する事例なら数万円で完了するケースもあります。

浴室や水回りの全面改修は50万円以上が目安

浴室の全面入れ替えやユニットバス化を含む水回り改修は、50万円から100万円程度が一般的な相場です。バリアフリー対応のユニットバスでは段差ゼロ・滑りにくい床・手すり・低い浴槽縁が標準装備となっており、設備代と設置工事費を合わせるとこの価格帯に収まります。トイレを和式から洋式に変更し、間口拡張や手すり設置を加える事例では20万円前後からが目安です。介護保険の住宅改修や自治体助成と組み合わせることで、自己負担を抑えながら工事範囲を広げられます。

まとめ:場所別の優先順位で進めると後悔を減らせる

優先順位

バリアフリー住宅は高齢者や障害者といった要介護者が暮らしやすく、「自分でできる所は自分で」という自立を促す家づくりです。一生暮らしていく家だからこそ、要介助者だけでなく、家族や介助者らにも優しい構造にする必要があります。

「我が家には障害者はいない」「両親と住む予定はないから」といって何も行動を起こさないのではなく、いつどんな時も、誰もが暮らしやすい住まいづくりを実現させておくことで、将来への備えはもちろん、子どもや孫たちへの財産にもなります。

リフォームの際には、要介護者が暮らす家では介護保険制度や、減税を受ける事もできるといった補助金制度もあります。ぜひ、バリアフリー住宅へ具体的に動き出すきっかけにしてください。

本記事の要点は次の通りです。

  • バリアフリーは物理・制度・文化情報・意識の4つのバリアを取り除く考え方
  • 浴室・トイレ・玄関・廊下・キッチン・リビングの各場所で代表的な事例がある
  • 介護保険の住宅改修は支給限度基準額20万円までが対象
  • 所得税特別控除や自治体助成は併用できる場合がある
  • 費用は手すり数万円から浴室全面改修100万円程度まで幅広い

■監修_リビングサーラ/施工管理担当者_資格:1級建築施工管理技士・2級建築士

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